January 05, 2010

『正月初席~かなのれん』

今日くれぇは揚げ物だろうと、白地に黒く染め抜いたひらがなだらけの暖簾をくぐり、壁を背にして木製の椅子に座る。
先客はカウンターに一名のみ。
卓上のメニューを眺めると、決して安くない。
それでも今欲しいすぐ欲しい揚げ物を選ぶ。
串かつをもらおうか。

待っている間に三組の客が続く。
揚がった串かつは一度、隣席の老夫婦の元へ運ばれた後、間違いと気付いた女性従業員の手によってあるべき席に運ばれる。
もちろん、穏やかな心で静かに受け入れる。

円筒状に揚げられた串かつには串は刺さっておらず、縦に庖丁が入れてあり、箸で持ち上げると、ヒレ肉と長葱の断面図が現れる。
美しいですなァ。
卓上にある幾多の調味料を用いるのももどかしく、見えないをつかむような心持ちで完食を果たす。
くりすぴぃ&じゅうしぃ

勘定を済ませた頃には空席が埋まりつつあり、後続の客と入れ替わりで暖簾を手で撥ね上げ出る。
客は常連らしく暖簾をくぐると同時に「串かつー」と厨房に頼んでいる様子。
続けて、「おめでとうございます、あけましてね」って、全部逆じゃん。

(了)

投稿者 yoshimori : January 5, 2010 11:59 PM
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