January 28, 2010

『正月下席~敦盛(熊谷直実笛夜噺)』

昼時、外へ出ようと室内から通路へと出る。
同じ館内とはいえ、室温と比べると幾分か温度差がある。
階段より階下を目指す。
先を歩く知人の表情は曇っている。

「何か・・・匂いませんか」
・・・そう言えば、何だろ。

「小学校の頃、通学路がこんな匂いでした」
んー、何か水っぽいよね。川沿い? 川沿い小学校? 小学校川沿い?

「黙って。今、思い出そうとしてますから」
何をだ。当時の思い出か。

「あ!」
そうかー、そりゃァつらかったろうなー。

「まだ何も言ってませんよ」
何を思い出した?

「金魚ですよ、金魚の死骸臭。あー、すっきりしたぁ!」

・・・すっきりしないよ。

(了)

投稿者 yoshimori : January 28, 2010 11:59 PM
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