かつて豊島区に、「哈尓濱(ハルピン)の水餃子」なる品を菜譜に載せている店があった。
数年振りに店先を伺ってみると、和風ダイニングに変わっている様子。
こぎれいなだけの内装は、何の色も醸し出していない。
無論、暖簾をくぐることはなく、別の店を探す。
後で知ることになるのだが、当店は2005年4月を以って閉店し、店の大将は故郷ハルピンに帰ったという。
水餃子の味自体はさっぱり記憶に無いのだが、大将の口から語られる地元エピソードには、何処か大陸的な匂いが漂い、満州で馬賊になると夢見ることすらも矮小に感じたものだ。
そう、水餃子が食べたかったのだ。
欲するものを思う時に傍にないとは、喰気と色気はさも似たり。
致し方無ぇ、代わりにもならァしねぇが、他で我慢してやらァな。
(了)
投稿者 yoshimori : February 22, 2010 11:59 PM