えェ、本日ァ南北線沿線で御座んす。
坂下の更に下る坂の途中、見たことも無ェ家紋が染め抜かれた暖簾をくぐりまして、木戸を開けますってぇと、白木のカウンタァに案内されますな。
始めに「鶴齢」を冷やで一合いただきまして、幾つかの品を女中に伝えます。
運ばれる突き出しはってぇと、バイ、昆布の佃煮と何かが三点盛り用の横に長ェ小皿に乗ってますな。
突き出しの一点は失念しやして、面目次第も御座ィません。
十九時にして品切れという鶏豆腐を諦めまして、揚げ出し豆腐を代打に据えまさァ。
皮剥の造りも終わっちゃいましたなんてぇ云いますな。
せめて肝だけでも喰いてェなんてぇのは、意地が汚くていけやせん。
エボダイ塩焼きを突付き、芽キャベツの唐揚げをつまみ、米茄子海老しんじょうを転がして、「雨後の月」、「白岳山」と続けまさァね。
程好い加減になったところで勘定を済ませ戸外に出まして、街道を流す辻駕籠を拾い、河岸ィ変えましょうかねぇ。
(了)
投稿者 yoshimori : March 10, 2010 11:59 PM