えェ、北陸路の噺で御座んす。
世に俳聖なんてぇ云いますってぇと、まァ何は無くとも松尾芭蕉翁になりましょうな。
当時って申し上げましても、年代ははっきりしませんが、あたしの故里にたどり着いた芭蕉翁は、旧街道沿いの宿場町に一泊したそうで。
あたしの里ァ海沿いの米所で御座んして、当時も米俵の荷揚げなんぞで賑わいを見せたってんですが、今もなお旧街道に沿って千本格子が嵌る町屋が幾つか残っておりましてねぇ、町中を縫うように流れる川沿いに面しました旧ィ家には、舟が舫いであったなんてぇ名残も見えまして、たいそう風情がござんす。
しはらくは花の上なる月夜かな
翁の句碑が残る神社にゃァ櫻が植わっているのかは存じませんが、この「花」は櫻なんでしょうなァ。
里での櫻に馴染みが無ぇのを思い出したという、甚だ個人的な一席で御座ィます。
(了)
投稿者 yoshimori : April 8, 2010 11:59 PM