ヌタウナギをやっつけてやろうと、百人町へ向かう。
日本では日常的に馴染みのないこのウナギ、英語名ではハグフィッシュ、スライムイールとまあ物騒なネーミング。
本場リトルコリア大久保でのハングル表記は、コムジャンオ(꼼장어)。
何故ヌタウナギという名になったかと問われれば、「ぬたぬたしてるから」と答えるしかないが、実際ヌタウナギは特有の粘液腺(通称:ヌタ腺)から白色糸状粘液を放出し、獲物の鰓(えら)に詰まらせ窒息させて捕食したり、外敵から防御するのだ。
そして、「厳密な意味で魚類ではない」という。
じゃあ何、何なのよと怯える同行者をなだめすかして入店。
ハングル表記の店員より小上がりに通され、目当てのコムジャンオの炭火焼を注文。
「お客さーん、そこの席ね、煙吸う機械壊れてるネ」
煙? がっつり出んの?
「出るね、もうたいへんよ。顔見えないヨー」
じゃあ、出ないのにして。
「コムジャンオのホイル焼き、おすすめヨ」
じゃあそれ。
コムジャンオホイル焼き
「はい、焼けたから食べていいヨー」
うわ、鰻に見えないー。さあどうぞどぞどぞ。
「イカみたい!」
鰻なのに?
「食感がゴムっぽい!」
えー? これ深海魚らしいよ。肌つやがピンクで、目なんか退化しちゃって皮膚に埋もれてて、もう絵的にグロくてグロくて。
「え? 食べたことないの?」
ないよ。
「自分で食べたことないものを、まず人に食べさせるのが趣味なの?」
いや、あれ? そうかな? そうかも。
「ひどい!」
いやいやいや、これで全然食べないのならひどいけど、自分で食べるし。
「ゴムおいしい!」
どっちなんだ。
一軒目は日付が変わる前に解散しまして、二軒目はひとんちでパーリーナイトの残骸を処分する方向でひとつよろしく。
(了)
(0512工期満了)
投稿者 yoshimori : May 1, 2010 11:59 PM