May 27, 2010

『五月下席~軸違い二ツ葉澤瀉』

極東唱片より世に出たという「人の顔によく似た葉を高く伸ばす水生植物」の紋と名を冠した音藝集団の棟梁である音刻み師が愛して止まない水上の格闘技なる官営の場外には縁もゆかりもありはしないが、同種の栽培変種である種の塊茎の地下茎が「芽が出る」という形状に起因する縁起物と知るものの、やはり故郷では年始の重箱のどの段にも入っておらず、更に馴染みが無いという何処にも向かない、人類が粗方淘汰された世界にたったひとつの核施設の如き存在であるのも幾ばくかの寂寥感が伴い、骨折って共通言語を探してみると、七寸五分から成る竹製民俗楽器を用いた地元限定の民謡を当音刻み師ががっつりいじり倒しており、ようやく満を持して幼な子が敬慕する肉親に向ける表情を造り始めたところ、この原種の亜種に粒状の地下茎がもしかしたら揚げ物でいただけるのではないかという期待を寄せる、箆状なる葉の形状が「顎無し」とされる品種があると聞き、機嫌を取る為に与えられた筈の飴玉を、何かの拍子に呑み込んでしまい、どうにも取り戻せないという遣る瀬無い気分にもなるのだ

(了)

投稿者 yoshimori : May 27, 2010 11:59 PM
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