June 30, 2010

『六月下席(千龝樂)~江ノ島舟唄』

ジントニックを頼んだんですよ」
いや、ていうか俺さ、店員じゃないから。

「そういうことじゃないです。そそっかしいですね
・・・えーと、誰がそそっかしいのかな

「まァ聞いてくださいよ、ジントニックですよ」
はい、ジントニック入りましたー

「それじゃァ振り出しに戻ってますって」
ジントニックがどうした?

ジントニックを頼んだらですね、ジンと氷が入ったグラスが来ました」
それはトニック抜きだね。

慌てないでください。その後でトニックウォーターがボトルで来ました」
そういうなの?

「ちゃんと聞いてくださいよ。で、トニックをグラスに注ぎますね」
それ、ジントニックじゃん。

「そうですよ、オーダー通りですよ」
それがどうしたのかな?

「で、こう、ね、飲み干しますよね」
そうね。

トニックウォーターは有り余るわけですよ」
なるほど、有り余るね。

「で、言ってやったんです」
店員に?

「いやいやいや違いますよ、ジントニックを頼んだ女にですよ」
女が出てきた。あー、君の話じゃないんだね。それで?

『中、もらえば?』って」
・・・ねぇ。

「そしたら、『えっ!?』って顔するんですよ、あの女!
・・・。

ってホッピーかい。
男と女の間には深くて暗い川があるのだ

(了)

投稿者 yoshimori : June 30, 2010 11:59 PM
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