直訳すると「潮風防腐剤」なんて物騒な和名の液体を求めて、上野行きの都バスに乗り込むと、他の交通機関よりも老若男女における「老・女」乗車率は断然高いながらも、座るという行為を拒絶する老婆が後を絶たず、空席が目立つ中、通路だけがやたら混雑しているという、定刻通りの運行に支障を来しかねない状況であり、長崎では高校生が優先席に座ってるだけで、傘を振り被って鼻骨を折りにゆく武闘派老婆がいるというのに、このバスに乗る老婆らは「安楽に着席」よりも「速やかなる降車」を最優先としている為、結果、より複雑なカオスを生み出し、出口付近の手摺に寄り添う男子小学生が老婆の迅速な行動に巻き込まれ、毎度毎回外に吐き出されるという小競り合いを幾度か繰り返し、彼らはただ奥に居ながら他の乗客を掻き分け掻き分け出口に向かいたくないというそれだけの願いなのに、思いはただひとつなのに、互いが共感し合った個体が漠然と集合したところで、烏合の衆とはよく云ったもので、それぞれが似たり寄ったりの主張を繰り返すだけの群体でしか成り得ないのだなと思うのだった。
(了)
投稿者 yoshimori : July 8, 2010 11:59 PM