重大な事態だ。
これから遠方に旅立とうとしているというのに、何の準備も進んでいない。
何故か数時間前から室内の清掃を始めており、現場の惨状を伝えられないのが歯痒いくらいだ。
挙句、タイプGの出現によって発令された、厳戒態勢も未だ解除されていない。
惨劇はいつだって何の予告もなく唐突に始まるのだ。
今何時だろうか。
時計すらも見当たらない。
刻一刻と迫るのは、乗るはずの交通機関の出発時刻。
漠然とした時間しか知らされていないという不利極まりない状況下で、ただただ焦りは募るばかりだ。
そして、更に事態を深刻化させているのは、空腹であること、前日の睡眠が圧倒的に不足していること、数日間の滞在であるにもかかわらず劇的に過重な荷という三重苦である。
嗚呼、もう嘆息ばかりだ。
都々逸でも回そう。
♪夏痩せと 人に答えてほろりと涙 捨てられましたと云えもせず♪
って何だそりゃ。
もう駄目かも分からん。
とりあえず、逝って来ます、あ、いや、行って来ます。
(續く)