七時に目覚め、階下より呼ばれた気がして下りてゆく。
既に人の気配はなく、食卓には三日間は過ごせそうな勢いの膳が据えられていた。
完食すると当然、"Großmutter von Rotkäppchen"(独)を丸呑みにした"Canis lupus"(拉)の末路に近しい状態となるのだ。
身動ぎも儘ならず、これでは幽閉されているのにも等しいと思い、現状からの脱出を試みる。
元より軽微な警備の為、難も苦もなく外へ。
空は何処までも青い。
飛び込むつもりは毛頭ないが、闇雲に海を目指す。
それなりに歩いても、さほど風景が変わらないのは、鄙びた地域の証左である。
この地には坂がない。
何処までも平野が拡がるばかりで、上り下りの区別が酷く曖昧なのだ。
傾斜が存在しないというのは、往路と復路の差を体感できず、起伏の意味さえ忘れがちだ。
寺町へと入る。
眞宗大谷派 北海山称永寺(濱の御坊)@常磐町
山号寺号の表記が正しいか否か疑問だ。
猫@常磐町
呼ぶと黙殺し、呼んでもいないのに振り返る、それが猫だ。
宿場回廊なるエリアを徘徊する。
かつての宿場町であった名残を今も残す河川に隣接する木造の家屋、風情も情緒も感ぜられるのだが、如何せんそのほとんどが廃墟に等しく、行政の力の注ぎ加減が残念でならない。
宿場回廊のひとつ
川はやがて海との境界線を消失してゆく。
河口
空には白鷺が舞う。
砂浜と海面
漂着物の大半は工業製品。
漁港と船舶
漁師らが網を干している。
海風に晒され、陽射しに灼かれて肌が焦れて来た。
そろそろ引き上げよう。
日暮れには、隣町で半島系の料理をいただく予定なのだ。
(續く)
(0802工期満了)
投稿者 yoshimori : July 16, 2010 11:59 PM