四ツ足の臓物を喰らいに来ている。
暖簾をくぐると、木目を基調とした内装、鰻の寝床的に奥行きのある店内。
臓物が供給する素晴らしい栄養素だけで生きている健康そうな店員に案内されて中ほどの席へ。
日曜ゆえに刺し系は少ないと釘を刺され、幾つかの生食を諦めて、気違い水と臓物七点盛りを頼む。
ほどなくして出てくる品々。
塩での注文の為、小皿には胡麻油が満たされ、別皿にはがっつりの青葱が盛られる。
臓物職人が席まで訪れ、熱の入った指導がなされる。
三種の豚臓物はこんがりと焼け、死にたくなければな、四種の牛臓物はそんなに焼かなくてもよい、半生でもよい、焼けたらごまーぶらに浸して葱と食え、ごまーぶらが足りなければ呼べ、うほうほ等と指示されて、仰せに従って網に載せてゆく。
塩七点盛
9時の方向から時計回りに解説。
・・・人の話をあまり聞かないのが災いし、店員の懇切丁寧な臓物説明、焼き方指導を軽く聞き流してしまう。
特に牛の部位の表記にはさっぱり自信がないので信じるな。
◆ドーナッツ ・・・ 豚の軟骨。かりかりにして、こりこりと喰らう。
◆シロ ・・・ 豚の腸を切り裂いて、平たく薄くのばしたもの。
◆カシラ ・・・ 豚の頬肉。内蔵?
◆ハチノス ・・・ トリッパ! 牛の第二胃。臭気抜きの為、一度ボイルされている。トリッパ!
◆ホルモン ・・・ 広義には内臓全般を指すが、狭義ではテッチャン(大腸)である。
◆コプチャン ・・・ 小腸。ふるふるなのは脂肪。
◆ギャラ ・・・ 牛の第四胃。反芻胃ではない、消化液を分泌するという胃本来の姿である。
更に牛の胸腺であるシビレを追加し、網も焦げよとばかりに炭火に晒し、全てを喰らい尽くすと二時間半が経過していた。
猛暑のさ中、煙と脂を重ね着をし、熱帯夜を過ごすのだ。
(了)
※画像と本文は関係ありません