前日の痛飲を起因として、午から気絶と覚醒を繰り返し、空腹を覚え目覚めた18時半。
高い気温と湿度に心身ともに蝕まれている状態を打破すべく、憑物落としと見立てて外へと飛び出す。
自前二輪に跨り、山手通りから中野通りへ、そのまま直進、甲州街道を渡り、商店街脇の地味な路地に目指す店がある。
飲んだくれるには程好い時刻だ。
壁に貼り出されている品書きに、「アスパラの刺身」という文字が見える。
女将に頼んでみる。
グリーンアスパラガスが直立していたと仮定するならば、正面背後問わずに上から順に幾度も袈裟斬りにした状態で皿に盛られている。
断面は瑞々しくも美しい。
女将に手によって塩が盛られ、若しくはマヨネーズか山葵醤油で喰えという。
まずはと塩で食す。
む、これは。
口にしたこともない食感。
表皮は硬いに違いないと思い込んでいたが、綺麗に裏切られてしゃっきしゃきである。
聞けば、栃木は大田原の産であるという。
当店では数年前から客に提供していたが、最近ようやくデパ地下でも取り扱い出したとは女将の談。
調子付いて、他の品を立て続けに頼む。
平目の造り、蛸ぶつ、鱚の天麩羅を肴に杯を重ねていると、気付けば四時間半が経過していた。
店の暖簾も仕舞われ、もう閉店かと帰り支度を始めていると、これから四ツ足の臓物を焼くという趣旨の連絡を受ける。
車道を我が物顔で走り抜ける高級自転車に跨る見知らぬ女の傍若無人で道交法って何?状態な自滅に等しい無謀な行為に憤りとはらはらを覚えながら、時には獲物を狩る猛禽類の如き動きで次の河岸に向かいます。
(漁)
投稿者 yoshimori : August 7, 2010 11:59 PM