August 16, 2010

◆『八月中席~蒼の十三號』

『春風亭一之輔ひとり会 「下北のすけえん〜蒼い夏、紅い夏〜」』
@下北沢シアター711

明日の「紅い夏」はてぇと、スケ(助演)が柳亭左龍師匠でして、そのパパイヤ鈴木似(自称)の体型だけに、正に「紅い夏」なんでしょうなァ。
本日ァ「蒼い夏」なんてんで、スケは、痩せぎすな古今亭菊之丞師匠でござんす。

春風亭一之輔◆口上

高座では見られない、眼鏡に普段着なんてぇらふな姿でのご挨拶で御座ィます。

「前座は春風亭小朝師匠のお弟子さんで、ぽっぽです」
「P.O.P.P.O、ぽっぽです。そんな何度も云わなくてもいいんですけど」
「皆さん、何で明日じゃなくて今日なんですかね。ぽっぽ目当てかッ!?」

春風亭ぽっぽ◆芋俵

後で知ったンですが、弟子入り前に"AKB48"のおーでぃしょんに応募したンですがねぇ、落選したそうですな。(小朝発言)

「P.O.P.P.O、ぽっぽです」
「気の早いお芋だー」

春風亭一之輔◆あくび指南

「凄いですね、ここスズナリ、隣は渡辺えり(旧:えり子)さんの一人芝居ですよ」
「こうやってね、肩を並べるっていうか、軒を並べてるだけなんですけどね」

「ワールドカップ、観てましたよ、うちの子どももサッカー好きなんで」
「デンマーク戦の後の渋谷凄かったですね、タクシーのボンネットにがんがん乗ってて」
「あれ、運転手怖いでしょうね、青い狂人に囲まれちゃって」
「テレビ観てましたら、あの、ワールドカップでPK外した人、駒野選手でしたっけ?」
「この人、AC公共広告機構のCMに出てるンですね」
「『いじめ、カッコ悪い』みたいな。ってそのまま過ぎるだろ」

「うちの子どもが恐竜好きなんですよ」
「NHKで恐竜の番組がありまして」
「うちの子、番組が始まる30分前からテレビの前でスタンバッてて」
「まだ『趣味悠々』だよって云ってンのに、ずっと始まるまで張り付いてましてね」
「まァ番組内で恐竜が滅んだ時の再現映像を流すんですね」
「隕石が、こうね、ゴーッって来て、ばーんてぶつかって、津波がうわーって、恐竜がわーって滅んじゃう」
「で、次に出てくるのが、哺乳類てんですよ。こんなネズミみたいな」
「番組が終わって、子どもを見ると息切らしてたりして」
「どうしたの? って聞くと、『ぼく、わかったよ』って」
「何が? 『ぼく、おとうさんとおかあさんの子じゃない』って」
「えー? それはお母さんじゃないと分かんないなァ」
「じゃあ何の子? って聞いたら、『ほにゅうるい!』って、馬鹿ですね」

「二ツ目は暇なんですよ、この時期」
「何処の寄席とは云いませんが、昼も夜も真打ばっかりで、二ツ目要らないンですね」
「二ツ目枠がないンですよ」
「こう、がーって、コピーとか取ったり、子どもの送迎したり、仕事してる振りはしてましたね」

「先月、前橋で若手落語家選手権ってのがあったんですよ、こっそりと」
「東京かわら版にも出てなかったンじゃないかな」
(客席より『出てたよ』と)
「あ、出てましたか」
「四派からそれぞれ二ツ目が出たンですね」
「立川流からはらく次さん、圓楽党からは好の助さん、芸協からは小蝠あにさんが出てまして」
「前橋テルサって1000人くらいの会場に、300人しか入りませんで、こっそりとやってるから」
「お客さんに投票してもらうんですね」
「ひとり2票持ってまして」
「縁もゆかりもない前橋ですから、組織票がねぇ」
「ま、あたしが優勝したんですけど」
(拍手)
「で、小蝠あにさん、高崎出身なんですよ」
「あにさん、地元じゃないですかって云ったら、『親戚30人呼んだ』とか云うんですよ」
「で、その親戚が楽屋に祝儀袋を次から次へと届けに来まして」
「あたしがもらった賞金よりも、小蝠あにさんの祝儀の方が多いンですよ」

<本編>
「俺が虫だったら、あの髱(たぼ)に棲みてぇ」

古今亭菊之丞◆天狗裁き

「あたくし、二十年以上前の話なんですが、浜田山に住んでおりまして」
「親父に連れられて、下北沢までよく遊(あす)びに来たもんです」
「もうすっかり様子は変わってますが、懐かしいですね」

「まァあたしは(春風亭)一朝一門は好きですね、あたしを呼んでくれるから」
「(春風亭)柳朝さんも呑気な人でねぇ、あたしは楽なんですよ」
「一之輔さんも柳朝さんも、いいですね、一朝一門はね、他は知りませんが」
「まァ一之輔さんも茶目っ気のある方で、この間はSM嬢に後ろ手に縛られちゃったりなんかしましてねぇ」
(楽屋より『勘弁してください!』との声が)
「もう云いませんよー、これ以上のことは」
「昼は上野鈴本演芸場に出ておりまして、・・・ここは二ツ目の要らない寄席なんですが」
「まァこの間の話ですが、鈴本の楽屋に(柳家)さん喬師匠と、(柳家)権太楼師匠がおりまして」
「ひっとことも口利かないンですね、物凄いぴりぴりしてるンですよ」
「あたしと(橘家)文左衛門さんが居たンですが、あの文左衛門さんさえも全ッ然喋らなくて」
「どうやらこの日、さん喬師匠は普段はあまり演らない、『明烏(あけがらす)』を高座に掛けることになっておりまして」
「ずーっとヘッドフォンしながら、ご自分の演じた時の録音を聴いてらっしゃいまして、稽古してるンですね」
「で、こう、先代の(桂)文楽師匠で有名な甘納豆を食べるシーンがありまして」
「稽古しているさん喬師匠もその仕草に入ってましてね、あ、もうクライマックスだなって、その時にですね」
「『前座ァ! 甘納豆買って来て! 松坂屋で!』って前座を呼んで、お足(金)を渡すンですよ」
「で、前座が飛び出してって、甘納豆を買って帰って来たンですがねぇ、これが『花園万頭』のぬれ甘納豆なんですよ」
「さん喬師匠、『これじゃないッ!』って袋びりーって破いて、口ン中に幾つか放り込んで、そのまま高座に上がっちゃいました」
「で、その後、権太楼師匠が『これ、行かない?』って飲みに誘われましてね」
「文左衛門さんと近くの飲み屋に行ったら、権太楼師匠が開口一番、(声色で)『見たァ? あれぇ』って云うンですね」
「まァその場に居て見てましたから、頷いたンですが、権太楼師匠、『あんなんで上手くなるわけないよなァ(笑)』って、まァふたりの仲は知れるってもんですよねぇ」

お仲入りで御座ィます。

春風亭一之輔◆青菜

「明日もお待ちしておりますよ」
「明日のゲストの左龍さん、楽屋じゃァ『小馬風』って呼んでますけど、いかついんで、顔が」
「明日の前座はねぇ、(春風亭)朝呂久なんですよ」
「楽屋が狭くてねぇ、ぽっぽぐらいが丁度いいンですよ」
「朝呂久が来ると、ただでさえ狭いのにもっと狭くなる」
「ごつくて、でかくてねぇ」
「ぽっぽ、明日も空いてないかなァ」

後で知ったンですがねぇ、朝呂久あにさんは、目方は三桁を超えておりまして、かつてはだんぷかー長距離運転手だったらしいンですな。

<本編>
「(大田南畝)蜀山人の作に涼しさを詠み込んだ狂歌が御座ィまして」
「庭に水 新し畳 伊予簾 透綾縮に 色白の髱」
(にわにみず あたらしだたみ いよすだれ すきやちぢみに いろじろのたぼ)

「逆に暑さを詠み込んだ句も御座ィます」
「西日射す 九尺二間に 太っちょの 背なで児が泣く 飯が焦げ付く」
(にしびさす くしゃくにけんに ふとっちょの せなでこがなく ままがこげつく)

「田鼈(たがめ)にそう云っとけ、拭き掃除しろって。埃だらけじゃァねぇか、俺の着物が汚れちまわァ」

真夏の暑ッ苦しい一席を終えまして、終演で御座ィます。
串打ちした鶏でも絞めようかなんてぇ勢いで、高架の線路向こうを目指しますなァ。

(了)

投稿者 yoshimori : August 16, 2010 11:59 PM
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