通い慣れたはずの友人宅に向かうだけで即座に迷い、携帯電話から先方へ現在地を伝えようと発言する度に「何処まで行ってんだ!?」と毎度毎回突っ込まれるという、地図の読めない四十路手前の男、何となく場所を伝えただけで、携帯電話にも店にさえも架電せずに、初来店の沖縄料理店へとまっつぐにやって来る。
「奇跡は起きたよ」
・・・! (口も利けないほどの衝撃)
「あれ? 聞いてる?」
・・・いや、驚きました。よくないことが起ぴそうで怖いえす。
「云えてないよ」
それぐらいのダメージを受けているのです。
「またぁ」
・・・この店大丈夫ですかね? 表に出たら何か落ちて来ないですかね。看板とかじゃなくて、メテオ級の。
「そうそう、奇跡続きで思い出したけど」
他にもあるんですか!? 死にますよ、本気で。
「コンビニでアイスでも買おうと思ってさ、ソーダ味を探したら、ラスいちのガリガリ君があってね」
まァそこはラッキィぐらいにしときましょうか。
「それが食べ終わって棒を見ると・・・当たりだったんだよ」
・・・この店でナマモノとか喰わない方がいいですよ、あたあた、あたりますから。
「何だろう、何かが確実に起きてるな、俺に」
もうまともに顔さえ見られませんよ、別人だったらどうしようかと思って。(涙)
「やっぱあれかな、嫁と別居してからかな。うるさいのが二匹いないからよく眠れて、体調もいいし」
・・・。
一週間前、実家に泣きついた嫁を同情した母親が車で迎えに来た際、嫁を乗せて走り去る車を見送った後ではたと気付き、急いで自宅に取って返し、信号待ちしている車まで走って追い付いて、ついでにこれもと嫁専用の愛犬チワワを開いた窓から押し込んだという。
それは当分帰って来るなという無言のメッセージに相違ない。
シングルライフを満喫している間に渦中に放り込まれるが如く、家裁からの呼び出しを恐れているという。
(了)
投稿者 yoshimori : August 25, 2010 11:59 PM