ようやっと涼しゅうなりましたなァ。
本日ァ皇居に最も近い演芸場でござんす。
十八時四十五分より開演なんてんで、最寄の支那料理屋で杯一引っ掛けまして、ちょいと間をつなぎます。
・・・小龍包の皮が蒸籠に貼り付いてますな、えェ、この、強情だなァおい。
どうにか時間内にやっつけまして、ずずずいと会場に向かいましょうかねぇ。
『第349回 日本演芸若手研精会 長月公演』@国立演芸場
「寿真打昇進柳家三之助卒業公演」
入船亭辰じん◆狸の札
「お客様にお願いがあります。携帯電話、PHS、アラーム時計の電源は必ずお切りください!」
「私の仕事はこれだけです」
春風亭一之輔◆錦の袈裟
「後程、三之助あにさん真打披露の口上がありますから、若手研精会勢揃いです」
「(三笑亭)夢吉さんは脇でいい仕事があるらしく、来ておりません」
「おかみたーん」
「おかみたんなんて呼ぶんじゃァないよ、みっともない」
「じゃァ、ハニー」
与太郎に『明烏』における若旦那時次郎の台詞を吐かせます。
「大変結構なお籠りでございました」
瀧川鯉橋◆だくだく
口調が師匠そっくりですな。
「たったひとりの芸協です」
入船亭扇里◆藁人形
扇里あにさん、近々真打昇進を控えております。
「ひとの口上に出てるばやいじゃないですね」
お仲入りで御座ィます。
口上◆市楽、こみち、一之輔、三之助、扇里、遊一、鯉橋、小駒(並び順)
緞帳が上がりますてぇと、紋付袴姿の噺家さんらが平伏しております。
柳亭市楽
「急遽司会を仰せ付かりました」
「まずは柳亭こみちよりご口上がございます」
柳亭こみち
「三之助あにさんは大変心の広い方です」
「毎年、三之助あにさんの家に集まる会がありまして」
「私はDVDライブラリーから二、三枚借りてゆくんですが」
「一度も返せと云われた覚えがございません」
「私の野望はあのライブラリーを少しずつ自宅に持ち帰ることです」
「隣が柳家の流儀が大嫌いな一之輔あにさんです」
春風亭一之輔
「こみちさん、三十超えての袴姿ですよ。・・・どの面下げてねぇ」
入船亭遊一
「三之助あにさんからPCをもらいました。ディスプレイはありませんでしたけど」
「協会のホームページ委員会です」
「圓朝祭のホームページ更新は、三之助あにさんがいないとどうなるかも分かりません」
「この会のチラシも三之助あにさんが作ってますね」
「卒業してもチラシ作りに来て欲しいと思います」
瀧川鯉橋
「何を話したらいいんですかね」
「この中で私だけが芸協なんで、なかなか話すことがね・・・」
「・・何年か前に三島の駅で偶然会ったことを思い出しました」
「私の師匠鯉昇のお供で行ったんですよ」
「三之助さんは、当時小ざると呼ばれてまして、(柳家)喜多八師匠のお供でした」
「ご案内かとも思いますが、三島では毎月第二と第四水曜日に落語会がありまして」
「喜多八師匠とうちの鯉昇、まァいわゆるダブルブッキングだったんですね」
「おふたりの香盤(格付け)はほぼ同期なんでさほど変わらないんですけど」
「うちの鯉昇の方が僅かに上で、『あにさんすいません』って喜多八師匠が謝ってました」
「そんな三島での思い出です」
柳家三之助
「いや、あの後ね、喜多八師匠から『三之助、すまん』なんて云われちゃったりして」
「来た時は新幹線だったんだけど、やっぱり仕事がなくなっちゃったから」
「帰りは各駅で帰ったんだ」
金原亭小駒
「来月より二ツ目筆頭」とのご紹介でした。
「経験から云いますと、真打になって卒業した際にはですね」
「ご贔屓の方々も同時に卒業されます」
「がくーんと一度は落ちるんですが、やはりそこは残された二ツ目が頑張りまして盛り上げます」
「で、卒業と同時に、こう、がくーんと、この繰り返しです」
入船亭扇里
「あたしも下席より真打披露興行となります」
「高座での絶句がいちばん多い三之助さんでした」
「よろしくお願い致します」
柳亭市楽◆鮫講釈
「柳家小三治と掛けまして、性質の悪い風邪と解きます」
「そのこころは?」
「席(咳)を押さえるのが大変」
「入船亭扇橋と掛けまして、寝相のよくない女の寝床と解きます」
「そのこころは?」
「まくらの行方が分からない」
「ほな、上方でいきまひょ。桂米朝と掛けまして、ピントの合わない写真撮影と解きます」
「そのこころは?」
「呆けとる呆けとる」
柳家三之助◆野晒し
「前座時代は根多がほんとに少なくて、『道灌』ばっかり演ってましたね」
「他の前座に聞いたら、みんな二十や三十持ってるんですよ」
「六つぐらいしかない噺をね、毎月演るんですよ、毎月ですよ」
「またか、また道灌か、って顔をされるんですよね。やがて諦めてくれますが」
「そのお蔭で、この会のお蔭で図々しくなりました」
当会、昨年に亡くなられた方なんですが、主宰の稲葉守治氏の審査が大変しびあだったらしくてですねぇ、前座で切られる方もいらっしゃった中、二ツ目として抜擢され、そして真打昇進にて卒業するてぇのはやはり、十年単位の歳月を噺家仲間と苦楽を共にし、研精を重ねてるだけに感慨深いものなんでしょうなァ。
江戸の仇を長崎なんてんで、赤坂見附で炭火ィ焼きましょうかねぇ。
(了)
※記憶が曖昧な為、正確な表現ではない箇所もございます。
勝手ながらご了承いただきたく、お願い申し上げます。