September 26, 2010

◆『九月下席~濃州東山道』

本日ァ浅草橋での落語会でござんす。

『第54回 鳥越落語会』@浅草橋・浅草橋区民館4階ホール

春風亭昇吉◆筍

「I.W.ハーパーのソーダ割り、旨過ぎる!」
「飲み過ぎてしまうので、法律で禁止して欲しいです」

「この噺、喜多八師匠から教わりました」
「『鼻捻じ』って噺に似てますよね」
「(桂)小南治さんが演るンですけど、小南系の噺なんでしょうかね」
「どういう噺かと云いますと、隣の家の枝が塀を越えて入ってきたので、学者先生が邪魔だって云って切っちゃうンですね」
「隣家の人が悔しいからてんで、どうにかしてやろうと考え、どんちゃんどんちゃんと宴会を催すんです」
「で、何を盛り上がってるんだろうと、塀越しに突き出した学者先生の鼻ッ先を捻じっちゃうのがサゲなんですね」
「・・・法的に云いますと、主幹は向こうにありますから、塀を越えてきた枝は切っちゃ駄目です」
「駄目なんですが、向こうに切らせることはできます」
「当然、鼻は捻じっちゃァいけませんね」
「筍はOKです、根が地を這うので」
「法律も解説できるなんて凄いですねー」

春風亭昇吉◆(演目不明)

「東京特許許可局」
「隣の客はよく柿喰う客だ」
「此の竹垣に竹立て掛けたのは竹立て掛けたかったから竹立て掛けた」
「赤パジャマ青パジャマ 黄パジャマ」
「生麦生米生卵」
「坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いた」
隣家に住む男の死因はてぇと、早口言葉が災いしまして舌ァ噛んで死んでしまったという悲しいサゲで御座ィます。

柳家喜多八◆仏の遊び (本田久作:作)

「アイダブルハーパーですって。前座のくせにねぇ」
「あたしらが前座の頃は歩いて行った北千住で一杯60円の酎ハイでしたよ」
「二杯までしか売ってくれねぇの、それ以上飲ると危ないから」
「だから酒が飲めねぇ奴を連れてって、頭数揃えて飲んでましたね」

「本田久作さんから高い値で売り付けられた根多を演ります」

<本編>
生臭坊主に連れられて阿弥陀如来が吉原へ女郎買いにゆきますが、阿弥陀の芸達者がゆえのもてっぷりに悋気した坊主は怒って先に帰ります。
「あいつァまだまだ修行が足らんなァ」

柳家喜多八◆おすわどん

「お中入り~」の声が流れますが、喜多八師匠、それを制して云います。
「昇吉が二席演ったんで、もう一席演ります」

<本編>
家主の愛妾「すわ」を追い詰めて患わせた亡き先妻の亡霊と思しき声の主を見極めようと、真夜中の路上に抜き身を持って身構える店子の牢人、郡山剛蔵、実は声の正体が蕎麦屋の売り声と知り愕然とします。
「ででで、ですから、お蕎麦饂飩です」
「何、おそばうどん? それで、おすわどん・・・か。とはいえ、身共も頼まれたからには証拠の品がいるのだ」
「品でございますか」
「其方の首を貰い受ける。出せ、手打ちにしてくれる」
「じょ、冗談云っちゃァいけやせん。・・・み、身代りにうちの倅を差し出します」
「何、倅とな」
「こ、これにございます」
「これは何じゃ」
「蕎麦粉にございます。蕎麦屋の子で蕎麦粉」
「こんなもん、何とする!」
「お手打ちになさいませ」

そして、お仲入りで御座ィます。

春風亭昇吉◆八九升(はっくしょう)

まずは聾(つんぼ)小咄から「親子の聾」。
「倅や、今向こうを通ったのは横丁の源兵衛さんじゃァねぇかィ」
「何云ってんだぃ、お父つぁん、耳も悪けりゃァ目も悪いのかぃ。あれは横丁の源兵衛さんだよ」
「おぉ、そうかい、儂ゃァまた横丁の源兵衛さんかと思うた」

続きまして、「川越しの聾」。
「おーい、川向こうの人ーっ、少々お尋ねしまーす!」
「弱ったなァ、何か聞きてぇみてぇだけど、何にも聞こえやしないよ」
「あたしゃァ、そちらに渡りたいんですがねーっ、どれ位の深さですかねーっ!」
「あたしは耳が聞こえないンですよー」
と、手を耳の位置まで持ってゆきまして、胸の前で両手を交差させまして×の字を拵(こしら)えます。
「ああ、そんなに深いンじゃァ渡れねぇや」

本題へ。
耳の遠い隠居より不条理な小言を貰った女中は番頭に泣き付きますが、答えて番頭、
「顔で笑って口では『つんぼ爺』とか『くたばり損ない』とか云ってりゃァいいんだ」
と諭します。
女中の詫び言として隠居の元を訪れる番頭、有言実行とばかりに笑顔で罵詈雑言を浴びせにゆきます。
隠居は番頭の表情だけを汲み取ってる為、持ち上げられたような心持ちとなりまして、調子付いて耳も聞こえないくせに番頭に質問を浴びせます。
「この火鉢は何処で買い求めたんだぃ」
と聞かれた番頭、横にしました帖面を隠居の前に差し出します。
「成る程、横丁でか。それで、木は何でできるんだ」
と聞かれた番頭、頭に手を遣って引き千切った髪の毛を隠居の前の火鉢にばら撒いて燃やします。
「うわっ、そんなもん燃やしたら臭いじゃァないか。ああ、そうかぃ、毛を焼くから欅(けやき)だな。ところで、今日の米は何処のなんだぃ」
と聞かれた番頭、蓑を被りまして、白扇子での舞を披露します。
「蓑で舞いを舞う、ほほう、美濃米かぃ。ところで、最近の美濃米は一両でどのくらい買えるんだぃ」
と聞かれた番頭、紙縒りを拵えまして隠居の鼻の穴へと突っ込みます。
「は、は、はっくしょぃ(八九升)!」

太田その(柳家そのじ)◆寄席囃子(下座)

後で知ることになるンですが、此のお方、あたしとタメでござんす。

◇元禄花見踊り
「六代目の円楽師匠は先代より名跡と出囃子を襲名しました」
「これは志村けんさんのバカ殿登場シーンでもあります」
◇佐渡おけさ
「今は笑点のレギュラーは外れてますけど、こん平師匠は新潟県はちゃーざー村出身ということで、佐渡おけさです」
◇おはら節
「鹿児島出身の噺家さんの出囃子です」
◇茶摘み
「静岡出身の噺家さんが出囃子で使ってます」
◇ロトのテーマ(序曲)
「ゲーム『ドラゴンクエスト』のテーマです」
「ゲームおたくの噺家さんが出囃子を決める時にテープを持ってきたんですが、それがオーケストラでして、それを聞いて三味線の譜にするのは大変でした」
「何とか弾けるようになったんですが、聞くとこれがドラゴンクエストに全然聞こえないんですね」
「たくさん練習して私が弾けるようになった時には、この噺家さん辞めてしまいました」
◇やぎさんゆうびん(山羊さん郵便)
「これ、かわいくて好きなんですけどね」
「洋楽の音はとっても苦手なんですけど、何とか弾けるようになりました」
「でも、これを弾けるようになった頃には、この噺家さんも辞めていまして、私が寄席で弾くことはありませんでした」
◇ちゃっきり節
「先ほど『茶摘み』が出たので、演ります」
◇さのさ
「ここで色っぽい曲を」
◇さのさ(京都ヴァージョン)
「京の舞妓はんです」
◇さのさ(仙台ヴァージョン)
「奥州へ飛びます」

柳家喜多八◆棒鱈

「おそのさんの次に上がる時は高座返し(座布団を裏返す前座仕事)は要らないンですけどねぇ」
「昇吉が嫉妬して裏返しやがるンです」
「最近じゃァ色物さんなんて呼ばないンでしょうかねぇ」
※色物 ・・・ 寄席における噺家以外の芸人を指し、赤字で書かれる為にそう呼ばれる。
「(五街道)雲助も前に上がってくれる下座さんを口説いてましたね」
「『面白いこと云わなくていいから、ただ前に上がって弾いてくれるだけでいいから』って云うンですけどね」
「『あたしは日蔭の女ですから』って、色っぽいンだか、辛気臭いンだかよく分からない答えでしたが」

<本編>
「旦那様(だぁさま)、何処ぞで浮気なさってるンでございましょ?」
「何ば云うちょっとか」
「お隠しになさっても駄目でございますわ、土蔵相模でございましょう」
「ああ、そげんとこは、大井、大森、蒲田、川崎らと参った」
「お相方さんは何方でらっしゃいますの」
「む、海老名屋の香葉子ちゅうたかいの。顔ではにこにこ笑いよるが、裏では何をしてるか分からんもんじゃいのう」

「まァ旦那様、ひとつお声が聴きとうございますわ」
「左様か、『百舌の嘴(もずのくつばす)』を聞かしたる」
「何ですの、百舌の・・・? おそのさん、知ってる?」

此の後、薩摩隼人風な田舎侍の謡いは「十二ヶ月(じゅうにかげち)」、「琉球(りきゅう)」と続きまして、隣座敷の町人が乱入しまして乱闘寸前となります。

追い出しとなりまして、のそぼ降る外へと吐き出されます。
侍の唄に出てきました琉球、彼の地より遠方に見えるなんてぇ臺灣(たいわん)を目指しまして、雷門へと向けて歩き出しましたところで、丁度お時間となりましてお後と交代で御座ィます。

(了)

投稿者 yoshimori : September 26, 2010 11:59 PM
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