September 29, 2010

『九月下席~佛眼相』

父親より電話口で諭されるほどに胃腸の調子が優れないというのに、ジャンクフードを目指して地下鉄に乗る。

当店、新しい店舗という認識だが、当店以前にはどういう類の店が営業していたのか記憶にはない。
品名が大書きされた木板が並べられ目立つ店頭である。
がしかし、価格らしき数値の表示がどの板にも見つけられない。
まァ立ち喰いだし、と暖簾をくぐり入店。

入って左にある券売機の前に立ち、しばし呆然とする。
当店最低価格に僅か20円を上乗せるだけで、一人前の蕎麦に小振りな掻き揚げ丼が付いてくるという。
そんな脂ギッシュな組み合わせ、胃腸が弱っているのに。
・・・少しの空腹感だけを理由にがっつりな食券を購入。
受渡口にて若造店員に食券を渡す。
温かい蕎麦で。

振り返って、カウンターというか壁に沿って取り付けられた板っ切れの奥に陣取る。
立ち喰いとはいえ、実はパイプ椅子が八つばかり設置されており、幾つかの選ばれし人々が先着順にて腰掛けられるという環境である。

刻み葱が入れ放題と事前に伺っていたのだが、卓上にはそれらしき器が認められない。
程なくして壁に「ネギ入れ放題」という旨の貼り紙を見つけたが、その上には更に別の告知文が寄せられている。

「急激な物価高騰につきネギ入れ放題は当面の間廃止致します」

卓上の薬味は全て使い切るという殲滅派としては、返す返すも残念である。

「お待たせ致しましたー」との発声に振り返ると、盆の上には小さい器ながらも丼から揚げ物をはみ出させてやんちゃアピールに余念がない掻き揚げ丼、隣には其の孫を連れ歩く祖父の如き、白髪葱だけが散らされた蕎麦がそこに。

麺もつゆも立ち喰いにしては及第点である。
が、この揚げ孫だきゃァ余計だったと後悔もひとしお
具が詰め込まれた大きさもさることながら、味も悪かァないが揚げ置きにて劣化してる感は否めない。
揚げ孫を一度祖父側に疎開させ、地階に潜む飯を喰ろうてから再び丼に戻すという手続きを踏まざるを得ないのだ。
その間、掻き揚げはずんすんとしなしなってゆく
これはこれで悪かァないが、何処か不健康な家族関係である。

次は別なるタネものを単品で頼みたい。

(了)

投稿者 yoshimori : September 29, 2010 11:59 PM
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