October 07, 2010

◆『十月上席~亭号家号』 (第弐回)

昨日に引き続きまして落語会、本日ァ二日目でござんす。
一週間に十日乗るなんてぇ半蔵門線半蔵門にて下車します。

『第350回 若手研精会 神無月公演』
@隼町(三宅坂)・国立演芸場

入船亭辰じん◆道灌

<本編>
「な、ななへやへ、はなはさけとも・・・」
「七重八重、濁りは打ってねぇんだ、花は咲けども、だ」
「・・・山伏の味噌ひと樽に鍋ぞ釜しき? 何だ此れ、お前が作った勝手都都逸かァ」
「勝手都都逸ゥ? さてはお前ぇ、歌道に暗いな」
「角が暗ぇから提灯借りに来た」

柳亭こみち◆粗忽長屋

「今日は遊一あにさんに連れられまして、午前中に一席演ってきました」
「この会、前回は遅刻したんで、今日だけは遅れられないと気合入れて行ったんです」
「朝も早くに起きまして、準備して、って当たり前なんですけどね」
「で、高座も無事に終えまして楽屋に帰ったところ、わたしの携帯に着信があったンですね」
「朝から気合入ったままでいるもんですから、『!ッもしもしッ!』って出ちゃいまして」
「高座では遊一あにさんが一席伺ってますんで、邪魔にならないようにと窓際に移動したんですね」
「そしたら、窓っていうか格子の向こうはすぐ客席でして」
「わたしの話し声がもう丸聞こえなんです」

「わたしはほんとにそそっかしくてですね」
「着物の部品をよく忘れますね」
「帯紐を忘れると女の人、着物着れませんから」
「お囃子さんから帯紐借りまして、その間、お囃子さんの帯はばらばらなんですけど」
「寄席ではそれで済むんですけど、落語会では間に合いませんね」
「会場で何かないですかって云ってもらって代用したのがビニール紐」
「凧糸」
「60リットルのゴミ袋を使いました」
「お前それでよく噺家やってるななんて云われますけど」
「まァ奇跡的に生きています」

「『お前は(入船亭)扇橋みたいになれ』ってよく云われるンです」
「『あんなにわけ分かんなくても許される扇橋みたいになれ』って」
「・・・わたしがこんなこと云うのもあれですね」

入船亭遊一◆目黒の秋刀魚

「待ってましたッ」と客席からお声が掛かります。

「あ、どうもありがとうございます」
「この間、浅草演芸場で高座を終えた後に、『待ってましたッ』なんてお声も掛かったこともございますよ」

遊一あにさん、残念ですがねぇ、前日の一席と同じ噺でござんした。
秋だてんで、旬だからしょうがねぇンでしょうかねぇ。

春風亭一之輔◆竹の水仙

「噺家稼業をあまりご存知でない方によく質問されます」
「『年収は?』とか。そんな時はまァ一億ですと答えてますね」
「『え? その若さで!?』と返されまして、三十二ですって答えると『ええっ!?』ってびっくりされます」
「『西暦は?』、1978年です」
「『昭和でいうと?』、五十三年です」
「『干支は?』って疑ってんのか、人の歳を!」

<本編>
「名人は上手の坂をひとまたぎ、なんて申します」

「行きなよ」
「いいよ」
「行きなって」
「いいって」
「行って来いって」
「いいよ」
「行けよッ!」
「(三つ指付いて)行って参ります」

お仲入りで御座ィます。

瀧川鯉橋◆武助馬

「あたしらもそうですけど、役者さんは大変なお仕事ですね」
「あたしにも役者さんの知り合いがございまして」
「声優の方なんですけど、増岡弘さんて方はご自分で劇団を旗揚げしておりますね」
「劇団と申しますと、俳優座ってありますね。そうですね、加藤剛さんとか」
「まァ俳優座の若手の方には時代劇の役なんてぇ付くそうですね」
「しかも台詞付きですよ」
「町奉行の捕り方の格好なんてしまして、十手をこう構えまして『待てッ、この曲がり者ーッ!』って」
客席の笑いが幾分か遅れます。
「・・・遅いですね」

「もう亡くなった方ですが、大女優ですよ」
「この方は映画と実物の差が凄いらしいですね」
「新珠三千代(あらたまみちよ)さんという・・・」
「亡くなった方にこんなこと云ってほんとに申し訳ないんですけど」
「この方が山奥でのロケ地で撮影中に怪我をされまして」
「マネージャーさんが慌てて近所に病院を探しまして、やっと一軒見つけまして」
「それが精神病院なんですね」
「でも他にありませんから、新珠さんを診察室に送り出します」
「お医者さんが『あなた、お名前は?』、『新珠三千代と申します』」
「『・・・あなたねぇ、うちにはそういう人はよく来ますよ』」

<本編>
「上方に参りまして、片岡仁左衛門の弟子になりました」
「ほう、大坂で仁左衛門の下に。で、何という名だい」
「・・・土左衛門の名を頂戴しました」
「・・・あんまり土手沿いを歩かないほうがいいね」
「それから、これではいけないと江戸に戻りまして、坂東玉三郎に弟子入りしまして」
「ほう、女形かい。何という名だい?」
「・・・玉触郎(たまさわろう)という名を頂戴しました」
「・・・それは聞かなきゃよかったなァ」
「それから、中村勘三郎の・・・」
「勘三郎といやァ大看板だ」
「・・・の向こうを張る役者、中村勘袋の弟子になりまして、頭陀袋(ずたぶくろ)という名を頂戴しました」
「・・・お前さんは、名付けの運がよくないねぇ」

金原亭小駒◆子は鎹(子別れ:下)

「大駒になれッ!」とのお声が掛かります。

「十年前に演ってみたら、これがどうもしっくりきませんで」
「自分も子を持ったら演れるかなァなんて思いました」

緞帳が下り追い出しとなりまして、小屋の外へと吐き出されます。
蕎麦でも手繰りながら杯一飲ろうかなんてんで、隣の麹町を目指しますな。
道すがら、びるぢんぐとびるぢんぐの谷間にちらりと見えた支那料理屋の裏ッ寂れた佇まいに恐れをなしつつも、秋の夜長は更けゆくので御座ィます。

(續く)

投稿者 yoshimori : October 7, 2010 11:59 PM
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