October 08, 2010

◆『十月上席~亭号家号』 (第参回・最終回)

先々日から続いております落語会、本日ァ三日目、勝手に千龝樂でござんす。

此れまで生きてきまして乗ったが数えるほどしかねぇなんてぇ都営浅草線人形町に向かうのは・・・止しまして、勝手知ったる半蔵門線に乗り、水天宮前にて下車します。

駅には何故か柳家権太楼一門のほたるあにさんがおりまして、黒い帽子に黒紋付姿で歩く桂平治師匠に話し掛けておりました、・・・という目撃例を後で聞きました
まァあたしはその頃、人形町にある支那料理店にて包子と叩き胡瓜を肴に杯一飲ってましたが。

会場にたどり着くと既に時刻は開演二分前でして、受付付近では当会の席亭が師匠連中の入りの確認を行なっております。

「(柳家)さん喬師匠、まだ? たぶんぎりぎりだから、いつも通りでしょ」

まァ主催者側からしてみりゃァそれはそれでご心配でしょうな。

『日本橋 夜のひとり噺 第2期 <第六夜 特別編:さん喬・扇遊・平治・一之輔四人会>』
@人形町一丁目・日本橋社会教育会館8F

入船亭辰じん◆金明竹

尺の問題でしょうか、与太郎と叔父のみの遣り取りがありまして、中橋の加賀屋佐吉方から参じました上方弁の男と叔母は登場しません。

春風亭一之輔◆短命

「若手です、見えないでしょうけど」
「この会では僕と辰じんさんだけが若手ですね」
「たぶん平治師匠も同んなじこと云いますけど」
「あたしは認めません」

「ここ水天宮前にはもうひとつ会場がありまして」
「ちらほらと空席も見えますが、間違って日本橋劇場に行ってるんでしょうね」
「あたしら芸人でも間違えますからね」
「ここの会場は座席が可動式なんですよ」
「遅れて入って来て席まで歩く時に通路がぎしぎしと鳴るンです」
「まァあたしはこちらの会場の方が好きですね」
「・・・向こうに行っても同んなじこと云いますが」

「芸人の生態をよく知らない方からよく質問されます」
「最初は出身地とか聞かれますね」
「『どちらのご出身なんですか』、千葉です」
「『千葉のどちらですか』、野田です」
「『あー、あの醤油の』、そうです」
「『ヒゲタとか』、キッコーマンです!」
「そこは譲れません」

「その辺から『それで、えーと、年収は?』とか聞かれます」
「人んちの事情にずけずけと、土足で」
「『ご家族はいらっしゃるんですか』、ええ、妻と子どもが」
「『養ってらっしゃる?』、ええまァ、一応養ってます」
「『あの落語で?』、・・・そうですよ」
「『ほんとは共働きでしょ?』、うるせぇっ!」

「歳を三十二ですって答えると『ええっ!?』ってびっくりされます」
「『西暦は?』、1978年です」
「『昭和でいうと?』、五十四年です」
「『干支は?』って疑ってんのか、午(うま)だよ、午!」

入船亭扇遊◆突き落とし

<本編>
「これから品川にゆきまして、その先で大しくじりをするという、お客様の生活には何の役にも立たない廓噺の一席で御座ィます」

お仲入りでござんす。
抽選会がありまして、以下の三点があたしじゃない誰かしらの手元に行き渡りましたな。

◇オリジナルTシャツ:二枚
◇「第24回 特撰落語会 馬生十八番・正雀十八番 ~十八番と掛け合いを」
演者:金原亭馬生・林家正雀
2010年10月16日(土)開演18時50分@深川江戸資料館小劇場
前売三千円(全席指定)テケツ:ペア三組
◇『落語を観るならこのDVD』瀧口雅仁:著(ポット出版):一冊

桂平治◆おかふぃ

「今日の会は男女の噺を演ってくれと云われてたンですが」
「あたしはそういうのは演りません、病の噺です」

「先日、入院しまして大手術を受けました」
「脳下垂体腫瘍でした」
「頭ですからね、(額辺りを指して)此処から開けるのかと思いましたら」
「唇を捲(めく)って鼻の下辺りの肉をですね、七糎(センチ)くらい切って」
「こう顔の皮を頭の方に捲っての手術だそうで」
「で、其処から脳下垂体の腫瘍を切除するンですって」
「手術の後、顳顬(こめかみ)の辺りに瘡蓋(かさぶた)ができてるンですよ」
「先生に、この瘡蓋は何ですかね、って聞きましたら」
「『あー、それね、捲った皮は看護婦が手でずっと持ってたのよ』」
「『でも看護婦だってね、何時間もそのままだと疲れちゃうでしょ』」
「『だから休む為にクリップで皮を固定してた痕(あと)だよ』って」

<本編>
三名の登場人物のうち、ふたりの顔に鼻がありません。

柳家さん喬◆幾代餅

「背高泡立草(セイタカアワダチソウ)なんてぇと風情がありますが、豚草(ブタクサ)ってのはどうも」

実は此の二種、間違われやすい別種の植物なんてぇ云います。
不思議と広く巷間に伝わりまして、大々的に訂正されない一例でしょうな。

追い出しとなりまして、会場を後にします。
此処人形町には贔屓にしてぇ贔屓になりてぇなんてぇ乙な店が何軒かあるンですがねぇ、後に述べるなんてぇ諸事情により此の町を立ち去るべく駅に向かいますな。

・・・町の灯りが此れほど憎い宵もござんせんなァ。

週末てんでがっつりと飲んだくれてぇンですが、ここはひとつぐっと堪えまいよと堪えまして、明日に控えた脂質再検査に向けてのカラダァ作りの為に其の為にィ、まっつぐ帰り、今正にこの時間から飲んだくれている不逞な輩に向けまして、飛びッ切りに口汚ぇ呪詛の言葉を吐きつつ、を削られる思いで耐ヱ難キヲ耐ヱ忍ビ難キヲ忍ンで寝床で昏倒するしかねぇンですかねぇ。

(了)

投稿者 yoshimori : October 8, 2010 11:59 PM
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