煮込まれた根菜を欲している。
薄味が望ましい。
やはり京風に限る。
願いは屹度叶う筈と下る地階への階段。
湯気に出迎えられ、座る止まり木。
まずはと福祝(千葉・久留里)を冷酒で。
たったひとつの大根を皿に盛ってもらう。
当然、卓上の和がらしは小桶ごと使い切る。
続けて鷹座巣(山梨・南巨摩郡増穂町)を。
埼玉産の握り拳大の里芋、串に刺さった変わり果てた姿の蛸を頼む。
武州は何処の産か聞き損ねたが、此の里芋は海老芋の如き長さ、赤く茹(う)でられた蛸足は軟らか仕上げである、吸盤を除いて。
薄味ながらに好く滲みているので、酒は前に進まざるを得ない。
いもたこなんざァ女の喰いもんだという末席に座る不粋な輩には表ぇ出ろと胸倉を掴んで啖呵を切っておくとこも忘れない。
望み通りに根菜を喰らい、程好く酒精に満たされまして次の河岸へと移動します。
(了)
投稿者 yoshimori : October 18, 2010 11:59 PM