夕刻、父と会う。
暗渠の上に這う小路沿いの小料理店。
地元での熊出没が意外な場面にまで波及していると知る。
「婆ちゃんがさ」
何なに深刻なあれですか、九十歳の老婆が熊と格闘? そんなニュースは見てないなー。
「まだ対面はしてない」
でも近所まで来てるよね、夜半朝方は危ないね。
「そう、だから暗いうちは出歩くなって云ったんだ」
耳が遠いから聞かないでしょ。
「いや、それでもその日は出て行かなかった」
円くなったねぇ。
「違うんだよ、逆に狡(こす)っからくて」
こすい。(笑)
「身内を油断させてるだけなんだ」
・・・田舎の老婆が深夜に外で何をするのさ。
「・・・うちと隣は境界線で揉めてるのは知ってるだろ?」
あれは悲しい出来事だね、竹林ごと取られちゃったし。
「その境界線は役所の仮設置で、小川の中に細い木枠が組まれてるだけなんだけど」
へー。
「(小声で)婆ちゃんはそれを夜中にごそごそと動かしてるんだ」
・・・。
三十八度線付近、闇に紛れて非合法活動を行う北の工作員の姿と重なった。
(了)
夕:
<突き出し>
法蓮草のお浸し胡麻和え
<造り>
鰯
皮剥(肝付き) ・・・ 黒鯛で著名な千葉・竹岡港より
<京風おでん>
豆腐
つみれ
じゃが芋
<熱燗>
菊水の辛口
@night:
//appetizer:en/antipasto:it/apéritif:fr//
"Salchichón"
"Jamón Serrano"
"olive"
"pickles"
"nuts"
//On the rock//
"Talisker"
"Chivas Regal"