October 22, 2010

『十月下席~不帰橋』

夕刻、と会う。
暗渠の上に這う小路沿いの小料理店
地元での出没が意外な場面にまで波及していると知る。

「婆ちゃんがさ」
何なに深刻なあれですか、九十歳の老婆が熊と格闘? そんなニュースは見てないなー。

「まだ対面はしてない」
でも近所まで来てるよね、夜半朝方は危ないね。

「そう、だから暗いうちは出歩くなって云ったんだ」
耳が遠いから聞かないでしょ。

「いや、それでもその日は出て行かなかった」
円くなったねぇ。

「違うんだよ、逆に狡(こす)っからくて
こすい。(笑)

身内を油断させてるだけなんだ」
・・・田舎の老婆が深夜に外で何をするのさ

「・・・うちと境界線で揉めてるのは知ってるだろ?」
あれは悲しい出来事だね、竹林ごと取られちゃったし。

「その境界線は役所の仮設置で、小川の中に細い木枠が組まれてるだけなんだけど」
へー。

(小声で)婆ちゃんはそれを夜中にごそごそと動かしてるんだ
・・・。

三十八度線付近、闇に紛れて非合法活動を行う北の工作員の姿と重なった

(了)


夕:
<突き出し>
法蓮草のお浸し胡麻和え
<造り>

皮剥(肝付き) ・・・ 黒鯛で著名な千葉・竹岡港より
<京風おでん>
豆腐
つみれ
じゃが芋
<熱燗>
菊水の辛口

@night:
//appetizer:en/antipasto:it/apéritif:fr//
"Salchichón"
"Jamón Serrano"
"olive"
"pickles"
"nuts"
//On the rock//
"Talisker"
"Chivas Regal"

投稿者 yoshimori : October 22, 2010 11:59 PM
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