November 08, 2010

◆『十一月上席~連獅子千年紀』

えェ、毎度ご贔屓様で御座ィます。
其の店の金平(きんぴら)天が好きで通い詰めてる蕎麦屋の親父があたしに云うんですね、「旦那ァすいやせん、今ァ其れ切らしてまして」、冗談云っちゃァいけねぇ、まだお天道さんも高ぇてぇのに店ィ種もんが無ぇなんてぇどの面下げて云ってやがるんでぇッて少ぅし脅かしましたらねぇ、「旦那ァ此れでひとつ勘弁してやってくだせぇ」なんて金平天を出すンですなァ、オイ親父此れが金平ってンじゃァねぇのかいって云いましたら、「へぇ、旦那が天麩羅って仰いましたから天麩羅はございやせんと云いました、此れは代わりと云っちゃァ何ですが牛蒡天(ごぼてん)でございます」、何をぅ天麩羅だァ、そんな間抜けな注文があるけぇ、金平ってンだよ、き・ん・ぴ・ら、中ァ牛蒡で上等じゃァねぇか、これでいいんだよ唐変木、「ああ、きんぴらですかい、なるほどねぇごぼうきんぴら、きんぴらごぼう、はははは」なんて肩で笑いやがるてんで、穴という穴に牛蒡を捩じ込み突っ込んで参りまして、其の足で此処に来ました。

本日は二ツ目さん勉強会でござんす。
トリの志ん吉あにさん、前座より二ツ目昇進なんてんで目出度い席で御座ィます。

『第351回 霜月公演 日本演芸若手研精会 「古今亭志ん吉二ツ目昇進祝いの会」』
@日本橋蛎殻町一丁目・日本橋劇場

入船亭辰じん◆垂乳根

本編:
「酒を飲んだら酔って件の如しか」

三笑亭夢吉◆寄合酒

「皆様、ご無沙汰しております」
「七月公演以来、出させていただいております」
「干されてた訳ではありません」

「わたくしどもの間では毎度毎回年長者が飲代を出す訳ではなく、前座が二ツ目になったとか目出度い時には年下が請け負ったりします」
「・・・今日は美味しいお酒が飲めそうです」

金原亭小駒◆辰巳の辻占

「お後のこみっちゃんは大根多でございますので、あたしの方は軽くご機嫌を伺っておきます」
「こちらの会場は九時完全撤収てんで」
「使用するに当たりまして念書なんぞ書かされたりしましてね」
「時間厳守でございますので、さらっと」

柳亭こみち◆死神

こみちねえさん演ずる死神は例外的に老婆なんですな。

本編:
「あじゃらかもくれん、きゅーらいす、てけ、れっつの、しんきち」

お仲入りで御座ィます。

春風亭一之輔◆化け物使い

客席よりNHK主催の新人演芸大賞を受賞した一之輔あにさんに「おめでとう!」のお声が掛かります。

「志ん吉さんは古今亭の方ですから、それはもう厳しく躾けられてまして」
「あたしらだけで飲みにゆく時には、師匠のお家にゆきますからとちゃんとお断りして(古今亭)志ん五師匠のお家に一度寄ってからご用を伺いまして、それで帰ってたんですよ」
「まァあたしなんて緩い環境で育ってますね、特に春風亭は」
「(入船亭)辰じんさんなんかは、ほいほい付いて来ますけどね」

本編:
「品川の宗匠、橋本光石さんの処に使いに行って来い」
光石宗匠と云やァ前座の辰じんあにさんの大師匠、入船亭扇船師匠の俳号ですな。

三匹目の化け物、のっぺらぼうが女と知った隠居は衣類の繕いの為に針を持たせようとしますが、女は何を思い違いをしたか襟元を掻き合わせて後ずさりします。

「何だお前、勘違いするなよ。こっちに来いてんだよ」
女の手を取って引き寄せ、へっどろっくの形になります。
「お前に顔を書いてやる、じっとしてろ、俺好みの顔にしてやる!」

古今亭志ん坊改メ志ん吉◆鮑熨斗

「一之輔あにさんの後は緊張しますね」
「前座から二ツ目になったと祖母に報告したんですよ」
「そしたら落語の話からNHKの番組の話に飛びまして」
「(こみちねえさん演ずる死神の真似をしながら)『この間テレビで一之輔さんを観たよ』」
「一之輔あにさんは『初天神』を演っておりましてですね」
「『あの団子から垂れる蜜を舐めるのが上手でねぇ。それはそうとあれは誰だっけねぇ、あの、ほら、頭の天辺がこんなんなってる、ねぇ、ほら』」
「祖母はぴろきさんと云いたいんですね」
「八十過ぎの老婆が寄席芸人を知ってるんですから驚きです」

追い出しとなりましてお開きで御座ィます。
向かった先では大信州なんてぇ大仰な酒ぇいただきまして、心ゆくまで芥子ィ擦り付けたなんてぇ練りもんで突っ突きましょうかねぇ。

(了)

投稿者 yoshimori : November 8, 2010 11:59 PM
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