何の因果か病院を転々としている。
其れが為に初診という過程を経なければ次の段階へゆけないという此の牴牾(もどか)しさよ。
ねぇ、ドクター。あ、これ何かヘイ、マスターみたい。ヘイ、マスター!(と指を鳴らす)
「そうだね、まァ君が現実逃避する気持ちは分かるとして、とりあえず前を向いて話そうか」
は。
「二泊三日コースからやってみる?」
どどどういうことになりますか。
「ここのドクターは、あ、ドクターっていっても僕だけじゃないよ、他にも居るうちの科のドクターを含めて基本的に平日しか居ません」
土日は居らんのですか。
「あと祝日もね」
はあ。土日祝と。
「そう、ドクター不在の土日にあなたの身体に万が一何かが起きた場合、適切な処置が即座にできなかったら困るでしょ?」
こここ怖いですね。
「だからね、ここんとこ大事だから聴いて、土日を含めずに、平日に最低でも二泊三日できる日を選んでね、まァ延びちゃう事もあるからそれも含めてねと、はい、次の方ー」
ありがとうございました。(涙)
なるほど初診から懇切丁寧だわいとひとり頷いてリノリウムの床を這うような姿勢で歩き、錆と皹(ひび)が目立つというされおつな外観の診察棟を後にするのだ。
(了)
投稿者 yoshimori : November 11, 2010 11:59 PM