まんそうかんえん【蔓草寒煙】
蔓延(はびこ)る草と寂しい煙と。古跡などの荒れ果てたさま。
◆蔓
飯田橋に来ている、正確に云うと富士見二丁目という地名である。
特に空腹でもなかったのだが当地には早い時間に満席になる店があり、通い詰めている程の入店履歴もないのだが目指してみる。
喫煙者なのでカウンタアの端に座らされ、其の疎外感が格別に快適である。
◆草
咥内、詳細を述べると左上奥に火傷を負う。
痛い、咀嚼もままならない。(涙)
◆寒
内田百閒集成を読んでいる。
先生の火遊び(と云っても色っぽい方面じゃない)エピソードが大変に面白く、少年的浅慮にて火悪戯が重大な結果を齎(もたら)しかねない状況で右往左往している様が微笑ましいのである、しかも大の大人が。
◆煙
外濠の土手沿いを歩いていると、遊歩道の脇に設置された灰皿が赤い焔と白煙を上げながらごうごうと燃え盛っており、先に百閒先生の話を見知った所為か、其の様を一瞥しただけで無性に可笑しくなり、傍から見ると放火の当人に思われかねないと覚ると、足早に其の場を立ち去るしかないのだ。
(了)
投稿者 yoshimori : November 18, 2010 11:59 PM