「着ぐるみって作ったことある?」
・・・いや、あるなしを答えるのも面倒なくらいに質問自体を否定したい。
「仕事の話だよ」
ああ、アキバ系の?
「いや、レディオステーションの」
ラジオ局って云え。いらっとした今。
「79.5メガヘルツのさ」
あー、エフエムさ○たまか。
「社名はちゃんと呼んでやれって」
それを作ったのか。ナッ○ちゃん?
「いや、ラ○ットくん」
あー、どうせウサギだろ。
「そう! よく分かったな」
読売のあいつと同じじゃんか。
「まァそうなんだけどさ、俺は作れって云われただけなんだから」
何でも屋だな。
「違ぇよ、俺の専門は印刷だよ。着ぐるみなんかやったことねぇし」
じゃァ何だってオファーが来るのさ。
「客から『やれないか』って云われたら、やらせていただきますってのが上からの指示だから」
なるほど。
「で、ネットで探してさ、営業を呼び付けて、3社から見積取ったね」
ふーん。(あくび)
「聞いてる?」
まァ人として、いちおう。
「で、発注したら完成品をどうやって運ぶかって話になってさ」
専用の通い箱を作らんとな。
「そうそう、それも作らせたよ、特注で」
えー? それは物流に云えば作ってくれんだよ、手前ぇらでやりいいように運ぶからさ。価格幾らか知らんけど。
「あ、そう、物流でも作れるんだ」
そうだよ、あいつら段ボールいっぱい持ってんじゃん。
「段ボール? いやいや、こっちはxxxxx(専門用語)製だぜ」
それで? この話長いの?
「まァ聞けって。で、箱が仕上がって来て客に見せたら、これ付けろって」
これって何よ。(両手の人差し指を手前から奥に回す仕種を繰り返す)
「何つーの、車輪? キャスター? こう転がすタイプの」
そんなに重いか?
「いや、ぶっちゃけ軽い」
何だろ、その余計なオプション要求は。台車でいいじゃんか。
「何か押したいらしいのよ、先方は」
へー。(あくび) その特注箱で納品したの?
「したよ。その前に着ぐるみを分解して梱包するレクチャーも受けたし」
絵的に子供にゃァ見せられんね、首もいで腕もいで脚もいで。着てみた?
「着たよ、俺担当者だもん」
画像とか動画はないの? お前撮ってそう、しかも自分撮りで。
「それは置いて来た」
そうかい。(しゃくれた喋りで)ラジッ○くーん、どすっ(パンチ)、遊んでー、ばきっ(キック)。
「でさ、当然イベントで使うじゃん?」
その為の着ぐるみじゃんか。趣味の手芸じゃァないんだから。
「それで客先から『中の人手配してよ』って云われた、俺印刷屋なのに」
あははははは、お前が入ればいいじゃん、あははははは。
(了)
投稿者 yoshimori : November 19, 2010 11:59 PM