<20100131現在、加筆・訂正・画像準備中>
真夜中に路上で拉致られ、目を覚ますとそこは一面白銀世界という午前三時に少し前。
温泉療治と云うと聞こえはいいが、全ては意思の弱さと流され易さレーベルの極北である。
浮かれきぶん送迎付き楽々雪山温泉ツアーの筈が、絶不調にて人との会話すら十秒さえ続かないという病みっぷりに周囲は呆れ返るばかりだ。
あまつさえ可能性のひとつとしては、流行性感冒の保菌者である疑いも棄てきれない。
それでも、動かないカラダに鞭打ち着々と準備を進めるしかないのだ。
(画像準備中)
セントレジャー舞子スノーリゾート@新潟・南魚沼
少しの仮眠を幾度か重ねて目覚めた午前七時。
事態は一向に好転せず、軽食すら口にできないまま、液体だけが頼りと覚る。
八時半、四人乗りの乗り物に乗っかり、頂上へと荷物の如く搬送される。
この空をゆく乗り物に見知らぬ人と同乗し、一時的とはいえ期せずして運命共同体となるのもまた世の習いである。
(画像準備中)
たぶん八海山とかその辺の山系
さァ数年振りの雪面滑走である。
しかもゲレンデのコンディションは奇跡的に素晴しいというのに、板を履いた自分は絶不調で下降の一途を辿るしか道はないのに、シュプールを描く方向はこの雪山の下りしか為り得ないのだ等という分かったような分からないような泣き言を呪詛に変えつつ踏み出す第一歩。
その数秒後、何か右足に違和感を感じ、路肩に寄せて停止。
足許を確認すると、右足の踵を固定するバインディングが長年の使用による劣化の為、腐食破損しており、既に修復不可能な状態であると気付く。
・・・神は私に試練を与えているのだ、たぶんきっとそうかも。
全てを諦めたものの、奇跡的な好天に恵まれていると、熱に浮かされたカラダが冷たい外気に晒され思いの外良い心持ちであると自らに言い聞かせ、全長六粁(km)というコースをとりあえず麓まで目指してみる。
今振り返ると、下手すりゃァ骨折の危険もあるというのに、冷静な判断ができていないのが恐ろしい限りである。
兎も角も無事に下山し、再び天空を舞う乗り物に乗り込み、同行者らとの待ち合わせ場所でもある山頂付近のレストランへと舞い戻る。
幾らか喉に良さげなジンジャーエールを頼み、疲労と体力の無さから派生する気絶と昏睡を繰り返しながら過ごすこと二時間。
合流した同行者らにバインディング劣化破損の事情を打ち明け、暫定的なそれでいて事実上の引退を高らかに宣言も軽く一笑に付される。
まァ確かに購入後十五年以上、手入れもせずメンテナンスさえ放置した事実は免れまいよ。
十五時に麓で落ち合うとし、同行者と一先ずの決別。
宿泊先への送迎も考慮すると、這ってでも時間内に下山せねばなるまい。
睡魔だけにはやたらに好かれるようで、少しの油断で気絶していることもしばしば。
その為、ただ徒(いたずら)に茫洋(ぼんやり)と過ごすこともなく、昏睡の中で時間だけが過ぎてゆく。
気付けば十四時四十五分である。
屈んだ状態でブーツをバインディングで固定していると、左側の劣化破損にも気付いてしまった。
・・・何も見なかったことにして、そのリスクを顧みず次のシークエンスへ移行するのだ。
ビジネスシーンであれば分岐点にて致命傷を負う道を選択した決定的瞬間である。
それでも無事に下山し、宿へと搬送される。
(画像準備中)
直江兼継公・上杉景勝公縁の宿@六日町
湯治に来た筈が入浴なぞ以ての外の体調となった今はただ昏々と眠るしかなく、午後六時半の夕食まで床に就く。
夢現(うつつ)に微睡(まどろ)んでいると、女中、いや仲居が膳の準備が整ったと呼びにやって来る。
(画像準備中)
夕餉の膳(画像で見ると病人食のようだ)
以下は「おしながき」に依る。
一、先付け 短冊イカ 山葵松前
一、お造り 海の幸盛り
一、温物 すき焼き
一、煮物 茶碗蒸し
一、進肴 紅鮭帆立巻、茄子、舞茸、パプリカ
一、強魚 ズワイ蟹片
一、煮物 鰊、蕨、人参、里芋
一、お食事 南魚沼産コシヒカリ
一、汁物 けんちん汁
一、香の物 自家製きざみ漬け
一、果物 オレンジ、パイン
・・・済まぬ、宿の者よ、確実に半分以上は残した。
どう頑張ってみても舌が胃腸がカラダが受け付けないのだ。
もう疲れたと次なる酒宴さえも暇(いとま)を貰い、今はただひたすら前ぬめりに床臥せるしかないのだ。
(續く)
投稿者 yoshimori : January 29, 2011 11:59 PM