March 10, 2011

◆『躑躅百人町』

本日ァ水木しげる御大が住まってらっしゃるなんてぇ、あたしにとっちゃァ聖地巡礼にも等しい調布での落語会でござんす。
乗り慣れねぇ京王線準特急なんぞで揺られまして、新宿から十六分、歩いて二分なんてぇ立地の会場を目指しまさァね。

『都民芸術フェスティバル2011 第41回 都民寄席』
@小島町二丁目・調布市グリーンホール

三遊亭歌る美◆子褒め

此の前座のねえさんの開口一番、客席から「おー」というどよめきがうねる様に発せられますがねぇ、此りゃァ「女の子だー」という個個の感想が集団として外へと漏れた結果でしょうなァ。

柳家さん弥◆金明竹

「現在噺家は東西合わせて八百人程居ります」
「此処でこうして皆様とお逢い出来たのも何かのご縁でございましょう」
「例えて云うならば、沢山居るしらすの中にごく稀に混ざっている小さな蛸の様なもんです」

三遊亭小遊三◆金は廻る

「あたしの師匠は三代目三遊亭遊三でございまして」
「此の前、二人の健康診断結果を見比べましたら、師匠の方が数値が良いンですよ」
「師匠は下戸で煙草も吸いませんからねぇ、其れなりに健康管理が出来てるンでしょうな」
「『お前ェの方が先に死ぬなァ』なんて云われまして」
「『お前ェが死んだら俺が葬儀委員長をやってやる』って云うんですよ」
「『あァでもあれだなァ、葬儀委員長てぇのは友人代表がやるもんだな』」
「『俺とお前ェは師弟関係だしなァ』」
「『じゃァ俺はひとつ喪主でもやろうか』なんて、引っ叩いてやろうかと思いました」

「此の師匠の師匠、つまりあたしの大師匠が四代目三遊亭圓馬と云いまして」
「何十年も前なんですが、圓馬師匠が心筋梗塞で倒れた時ゃァ弟子一同は驚きましたね」
「直ぐに駆け付けまして、『師匠ォォ、しっかりして下さいッ!』ってもう涙ぽろぽろ流したりしまして、まァ幸い其の時は無事に済んだんですが」
「まァでもね、流石に五回も続くともう涙も出ませんわね」
「『また師匠倒れたってさ。お前、病院行く?』」
「『いやァ、今直ぐは難しいなァ。うちの犬が患っててねぇ、先に動物病院に行って、其の後で寄るから』なんてなもんです」
「其の後やっと無事に死にまして、圓馬師匠のお宅でお弔いとなりました」
「圓馬師匠は下戸だったンですが、師匠のおカミさんが酒飲みでして」
「弟子等に勧められて、『そぅお、じゃァ戴こうかしら』なんて」
「『こういう時の酒がいちばん美味しいのよォ』」
「それで一座で一杯二杯と飲んでおりますと、テレビではニュースの時間になったんですね」
「『本日三時四十五分、落語家の三遊亭圓馬さんが亡くなりました』」
「此れを見た弟子一同、皆考えることは同じですね、寝ている師匠に手を掛けまして」
「『師匠、師匠! 起きて下さいッ! 今師匠がテレビに出てますよッ!』」

お仲入りで御座ィます。

青山忠一◆解説

青忠さん、トリに上がる圓歌師匠と同級生だそうで、圓歌師匠を「中沢さん」と呼んでおります。
吉原研究で博士号を戴いたという自らを「学界ではあたしだけですから」と大変嬉しそうに豪語しておりました。

大瀬ゆめじ・うたじ◆漫才

ゆめじ師匠、年末に渋谷にある居酒屋の階段で骨折しましてねぇ、まァ病院は基本的に酔客は受け入れませんから、都内を救急車で盥回された挙句、北区にある山頂の病院に入院してたなんてぇ云います。

本編:
うたじ師匠の藝風、所謂「ボケ殺し」は今回「割箸」に纏わる薀蓄でしたぃ。
他に「鰻」、「四十雀(シジュウカラ)」、「鰹」等の持ち根多があるなんてぇ耳にしましたがねぇ、あたしゃァ寄席でも割箸より余計聞いた事ァござんせん。

三遊亭圓歌◆中沢家の人々

あたしゃァ此の話を長講百二十分の完全版で聴いておりましたが、矢張り噺は生きものてんで細部は微妙に異なります。
以下は箇条書きになりますが、覚え書として列記しときましょう。

◇侍従長
宮内省は圓歌師匠宅へ宮中での高座を依頼しようとするが、当日はエイプリルフールだった為に電話に出た弟子連中からまるで相手にされず、当時の侍従長入江相政氏の手回しにて、時の内閣総理大臣佐藤栄作氏からの直電で事実と知る。
当初は常陸宮殿下の御前で一席の予定が、天皇皇后両陛下、他の宮様の御前にて長講四十分の高座となる。(此れも入江相政氏の入れ知恵という)

◇出囃子
宮中では歌舞音曲が禁止の為、鳴り物一切使えず、雅楽の笙で高座に上がったという。

◇昭和六十四年
御前公演を行った過去を持つ圓歌師匠と五代目柳家小さん師匠宛に、宮内省から「二日間喪に服せ」と落語協会に連絡が入る。

◇本遊院圓法日信
圓歌師匠の寺は静岡の戸田(へだ)に近い飯田にあるという。

追い出しが鳴りましてお開きで御座ィます。
六公演ありました都民寄席も本日で千龝樂となりました。
籤運が良かったのか無駄に運を使い果たしているかは存じませんが、お足も払わず拝見拝聴させて戴きましてねぇ、目が耳が曲がっちまわねぇかと畏れ入るばかりで御座ィます。

近くにあるなんてぇ店の練りもんの混ぜもんの焼きもんが旨ぇてんで、ちょいと足ィ運びまして昇降機に乗り込んだところで丁度時間となりましてお後と交代で御座ィます

(了)

投稿者 yoshimori : March 10, 2011 11:59 PM
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