此の日、食は更に細くなっており、昼餉を軽食に済ませようと近隣の喫茶室へ赴くも、只着座しているにも拘わらず、其の儘座っても居られない程の眩暈を覚え、暫くは口も利けない状態であった。
自分に何が起きているのかは分からないが、少なくとも大人しくしようと思う。
さて、先夜に引き続いての同じ食材での夕餉である。
如何せん霙鍋は手数が掛かり過ぎるきらいがあるので今回は見送ろう。
鐵鍋を昆布だしで煮立たせ、公孫樹切りにした大根と角切りの豆冨、手羽元と共に青葱と白髪葱に分けた長葱を煮込む。
煮上がるまでの間、酒精で満たされた杯を重ねていると、日中動けなくなった目眩に再び襲われた。
がしかし、今回は程好く廻った酔いもあってか、酩酊を装った振りで遣り過ごしてみる。
・・・病は氣からとは良く云ったもので、其の後は何事もなかったか如き身上で飲み続けている。
幾度も杯は空となり、鍋の中身も底が見える程に影形を失っている様子である。
やがて眼窩と鼻腔の間に昏倒の予感を察し、倒れ込む格好で朝に居た場所へ帰るしかないのだ。
(了)
投稿者 yoshimori : February 2, 2011 11:59 PM病は気から・・・わたくしもそう思いますが、
だ・・・だいじょうぶすか?
やっぱり、あのとき聞いた
「酒を飲むと ピタッと止まるんですよ、震えが」
という言葉は幻聴じゃなかったのか・・・