「人只麵包有效非也」
・・・そりゃァまァ麺麭(パン)ばっかりだと飽きちゃうからねぇ。
連日の鶏の水炊きにも幾分か飽いており、不意に梅安先生が時折拵えていた浅蜊と大根の鍋仕立てを思い出す。
此処で云う梅安とは、池波正太郎作『仕掛人・藤枝梅安』における鍼医者である。
然し小生、当作品を一読したという履歴は無い。
聞き覚えだけを頼りとして詳細なるレシピを調べる手間さえ省き、改めて食材を選び取ると未だ完治しない眩暈とふたり連れで夕餉の膳に向かうのだ。
買い求めた「活き浅蜊」の外装には「砂抜き済」とある。
「済」と断った割には「海水に似た塩水を作れ」とある。
しれっと黙殺し、殻諸共鐵鍋へ集団入水させる。
煮込むに連れて潮(うしお)な香りが漂い始め、頃合いで公孫樹切りにした大根を沈め、刻んだ油揚げを浮かべる。
ひと煮立ちするのを待つ間、一昨日より開栓している地酒を鍋に入れたり、口に入れたりしている。
料理酒と飲酒が同銘柄というのも贅の限りではあるが。
食後にざっくりとリサーチした本来の梅安レシピは以下の通り。
鍋:土鍋
出汁:昆布、味醂
食材:浅蜊の剥き身、千六本に刻んだ大根、油揚げ
味付:醤油
薬味:七色蕃椒(七味唐辛子)
・・・まァ食材が同じでも行程が違うとこうも色合いが異なるものかと感心せざるを得ない。
当方では喉が荒れ気味でもあるし、生姜醤油で食すと致そう。
非日常的に健康的な生活を送らざるを得ないのは、日常的に不健康だからである。
過剰にヘルシィなのは、常時アラートが鳴りっ放しな状態とも云えよう。
一刻も早く適度に不健康な暮らしに戻りたいと願う今日此の頃なのである。
(了)
投稿者 yoshimori : February 3, 2011 11:59 PM