本日ァ梅の花もちらほらと開き気味な湯島天神での落語会でござんす。
丁度一本で乗り換えなくゆけるてんで、寒風吹き荒む中を「都ばす」での移動と相成りました。
湯島の切通しより脇に逸れ、女坂から境内を目指します。
『百栄・一之輔ふたり会 ぎやまん寄席番外編 第14回』
@湯島三丁目・湯島天神参集殿
春風亭ぽっぽ◆初音の鼓
「(春風亭)小朝の三番弟子です」
「三太夫、三太夫は居らぬか」
「御前(おんまえ)に」
「うむ、三太夫、今宵は十五夜であるな」
「御意に御座居ます」
「して、お月様は出たか」
「これはこれは異な事を仰せれらます。お月様などと云うのは女子供の言葉。殿は大身なれば月は只月と仰せられます様願わしゅう存じます」
「成る程、余は大身によって、月は月と呼び棄てて構わぬか」
「御意に御座居ます」
「して、星奴等(めら)は」
「・・・この小咄は何回演ってもウケませんね」
「誰が演ってるのを見てもウケているのを見た事がありません」
「でも、私はそういうのが大好きです!」
ぽっぽねえさん、客席より御祝儀が付け届けられまして、「超嬉しい!」と下がってゆきます。
春風亭一之輔◆短命
入れ替わりの一之輔あにさん、屏風の向こうッ側で「幾ら入ってんだよ」とぽっぽねえさんに詰め寄る声だけが響きます。
高座に上がりまして、「中身はQUOカードでした」と言い放ちますが、勿論洒落で御座ィます。
「ぽっぽ、十一月から二ツ目昇進だそうで」
「そりゃァあたしだって二ツ目になった時は人並みに嬉しかったですよ」
「まァでも、それまで何があるか分かりませんね」
「小朝師匠が糖尿病で死んじゃうかもしれませんし」
「・・・人の生き死には洒落や冗談じゃァ云っちゃいけませんね」
「『駱駝』の兄貴もそう云ってます」
「次に上がる百栄あにさんは、昨日の上野鈴本演芸場での夜席のトリで千秋楽だったそうで、打ち上げで四時まで飲んでて、もう顔がパンパンです」
春風亭百栄◆誘拐家族
一之輔あにさんが仰ってた通り、「顔がパンパン」で寝起きの如き顔で御座ィます。
「『ももえ』という方は他にもいらっしゃいますが」
「日本でいちばん汚い『ももえ』と思っております」
『笑点』における番組初めのご挨拶を思いッ切りねがてぃぶにした自己紹介と亭号の名乗りを幾つか披露します。(「一家亭離さん」等等)
本編:
塾帰りの中二女子を誘拐した来年三十の男、父親に身代金を要求するが「五十万」と人質ががっかりするほど安いわ、「蓑田です」と本名を名乗るわ、「こんな立場だけど、あなたに敬語使う気全然ないし」と十四歳から言い切られるわと散散な展開に。
お仲入りで御座ィます。
春風亭百栄◆弟子の強飯
本編:
前編、六代目三遊亭圓生の物真似で通しますが、此の方の役どころが受験を控えた高校生てんですから、此れだきゃァ落語という演芸様式だけに許された話藝でしょうなァ。
「師匠から水カステラが付け届けられますと、弟子から強飯が贈られたという『弟子の強飯』という御目出度い一席で御座居ます」
春風亭一之輔◆抜け雀
「最近、池袋演芸場に出てるんですが、今日は凄かったですね」
「池袋の昼なのに、浅草の夜みたいな」
「お客さんのほとんどが年配の男性で、後は控え目な女性ばかりです」
本編:
旅籠相模屋主人は迂闊にも度度文無しを泊めてしまい、女房おみつから罵られながら物差で脅され、文無し空ッ欠からは怒鳴られ詰られるも、文無しの発する女房への中傷にさえ逆らい、「おみっちゃんの事をそんな風に云うな!」等と恐妻家ながら愛妻家の面目躍如たる噺の流れでしたぃ。
追い出しが鳴りまして、当会お開きで御座ィます。
元色町の湯島だけありまして、乙なつんぺんの店もあるなんてぇ聞きますがねぇ、あたしの今日の目当てはてぇと、熱した石皿の上の豚肉を箸で掴んで蒸した白菜の上に載せまして肉の上ッ面には醤蝦(アミ)塩辛をちょいと載っけた品なんてんで、寒空に託けて鱈腹滋養を摂りましょうかねぇ。
(了)
投稿者 yoshimori : February 21, 2011 11:59 PM