February 26, 2011

◆『爛れ早巻く』

本日ァ西新宿にあります高層ビルヂング四十七階での落語会でござんす。
生憎の曇天てんで、展望処からァ四方八方何ンにも見えやァしませんが。

元来は柳家喜多八師匠の会なんですがねぇ、実は二月五日に喜多八師匠入院の報が入りまして、急遽五街道雲助師匠の代演となりました。
当日配る小冊子も差し替えが間に合ったようで、しっかりと雲助師匠の名が入っております。
そして、助演(スケ)の蜃気楼龍玉師匠、前名が五街道弥助と申しまして、雲助師匠のお弟子さんなんてんで、期せずして親子会と相成りました。

『モリキド寄席第六弾~五街道弥助改め三代目蜃気楼龍玉誕生を祝う』
@西新宿二丁目・新宿住友ビルスカイルームB

柳家ろべえ◆元犬

撮影くるーが壁に凭れ掛かりまして一瞬電灯消えてしまい、ろべえあにさんは噺ン中で「・・・びっくりするじゃァないかッ」と隠居役としての台詞に本心を込めてました。

蜃気楼龍玉◆親子酒

「蜃気楼龍玉という名を襲名致しました」
「初代も先代もろぉくな死に方してないそうで」

本編:
若旦那と共に禁酒を誓った筈の大旦那、女房に酒を強請(ねだ)る様が秀逸でさァね。
「婆さん、おい婆さん、お前最近綺麗になったなァ」

五街道雲助◆お見立て

「あたくしは代演で御座居ます」
「喜多八師匠、糞詰まりだそうで」

本編:
喜瀬川花魁が焦がれ死にしたと聞かされて号泣する杢兵衛大尽の様を見た喜助の談。
「・・・何です、今の。・・・鳩が居るのかと思いました」

お仲入りで御座ィます。

雲助・龍玉・ろべえ◆口上

ろべえ:
「龍玉あにさんとの想い出はと云いますと、・・・北千住の『はなの舞』でしたかねぇ」
「あにさんは店でいちばん安い焼酎を頼むんですが」
「つまみは要らないってんですね」
「あにさんが要らないってんですから、当然私も頼む事も出来ず、お通しをつまみに飲ってました」
「・・・龍玉あにさんは飲んでる時に箸を割らないんですよ」
「お通しにすら手を付けずに、其の儘朝まで飲んでました」
「お身体には気を付けて戴きたいです」

雲助:
「もう大分方々でやったんで口上は飽きちまいましたな」

「此の男は遅刻が多くてですね、『何で遅れたんだ!』って小言云うと」
「『風邪を引きました』って云いながら、酒臭いんですよ」
「我々の方で何かしくじると坊主になるってのがありまして」
「遅刻五回で坊主だって事にしましたら」
「五回坊主になってました」

「一度『辞めたい』って云い出しましてね、困ったンですよ」
「何でだって訊くと、『二ツ目になりたくない』ってんです」
「ようく訊きますと、『独り立ちしたくない』ってんですね」
「辞めるのは構わないンですがねぇ、こういう男ですから辞めて正業に就いても間に合わないだろうと」
「普通、辞めるって云われたら『二ツ目になるまで辛抱しなさい』って云えるンですがね」
「其の二ツ目になりたくないてぇから、もう如何し様も無いンです」
「丁度其の頃出会ったのが今のカミさんなんですが、間に入って執り成してくれまして、結果辞めずに済んだんですがね」

「うちの一門は五街道を継がせません」
「弟子全員、亭号が違いまして」
「一番上が桃月庵白酒、次が隅田川馬石」
「で、此れが蜃気楼龍玉でして」
「先代龍玉は六代目の三遊亭圓生師匠が『龍玉の型はああだった、ああいう型が龍玉だ』と噺の型を例に挙げられる程の噺家だった様です」
「ですが、初代も先代も酒で身を持ち崩したてんですから、まァ継ぐにも継いだりですなァ」

柳家小菊◆粋曲

「梅は咲いたか」
<都都逸>
「~犬の遠吠え新内流し~」
「~梯子段上がったり下りたり~」
「気前良く」
「羽織り着せ」
「三階節」
「品川甚句」

蜃気楼龍玉◆妾馬

「・・・口上では何を云われるか分からないので、相当に緊張感します」
「矢張り散散に云われてしまいましたが」
「まァこういう感じなんで、お付き合いを願っておきます」

本編:
八五郎、御広敷で取次ぐ若侍に名を聞かれて名乗ります。
「あっしゃァ八五郎てんです」
「・・・ハッチャン、アッ、テンダー?」(←うろ覚え)

追い出しが鳴りまして、会場を後にしますてぇと通路には療養中の喜多八師匠がいらしてます。
顔色の悪さは平常通りかと存じますが、患ってると聞いた後じゃァより悪くも見えますなァ。
くれぐれもお身体だけにはお気を付けなすっていただきたく。

昇降機を待つのももどかしく、四十七階から地上へと舞い降ります。
降りた先にゃァ創業して六十年以上を経るという都内最古の臺灣台湾料理専門店でござんす。
他所の店じゃァなかなか耳にしない品名を幾つか戴きまして、西新宿の宵は更けゆくので御座ィます。

(了)


◆煙腸(エンチャン)・・・ 甘味は目立つものの然程気にならず、添えられた白葱と共に別皿のつけだれで戴く
◆火鍋(ホエコ)・・・ 白菜、ブロッコリ、魚丸、米粉、木耳、もつ、海老、スープは薬膳的薄塩味
◆烏魚子(カラスミ)・・・ 橙色の隣には菓子風ミニマムに角切りされた大根に小さい紫蘇の葉が載る
◆老肉(ラオーバ)・・・ 豚の三枚肉を柔らかく煮込んだものに葱、トマト、ブロッコリ、芥子が添えられる
◇黄酒 ・・・ 紹興酒(老酒)

投稿者 yoshimori : February 26, 2011 11:59 PM
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