February 04, 2011

『小間切れ穿山甲』

夕餉の為の空腹感を待つ間に十時間が経過している事に気付く。
振り返れば昼近い午前中に掌の大きさもないクロワッサンを食したきりである。
無論過食なぞ望まないが、少食過ぎるのもまた憂いのひとつと云えよう。
こういう時こそ「和」に頼るのが最善と考える。

千代田区にて生やかした根を薙ぎ払って辿り着く港区である。
下り坂の途中にある年季の入った色合いの暖簾をくぐると席は全て埋って見えた。
がしかし、威勢のいい女将に手招きされ、カウンタアの角の空席に案内されどうにか着座。
自らが思い描くべき筈の品を全て外部に委ね、以降は女将の薦めに全て従う。

◇突き出し三点(いぶりがっことクリームチーズ、しらすの三杯酢、なめこと小松菜の煮浸し)
◇白子ぽん酢(温)
◇皮剥の造り(肝付き)
◇魳(かます)の塩焼き

◇早瀬浦(福井・若狭)
◇寫楽(福島・会津)
◇北雪(新潟・佐渡)
◇加茂金秀(広島・東広島)
◇鳳凰美田(栃木・小山)

気付けば、米から生成された醸造酒しか受け付けなくなっている。
・・・いや違うな、それは好んで飲んでいるに過ぎない
自国の素晴らしい食文化を自らの意思で堪能しているだけである。
文明とは選択肢の多さで右往左往させる力を持つと知っているから、年功による限定的な選別をしているのだ。

大人に許された偏った嗜好で今日も生きている。

(了)

投稿者 yoshimori : February 4, 2011 11:59 PM
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