何かに呼ばれる様な心持ちで訪ねる地階の店、未だ十八時を少し過ぎたばかりだというのに席は既に埋まっている。
申し訳無しと云わんがばかりに両手拝みの大将に見送られ、通りへと舞い戻る。
迷い無く目指した先の店でも満席と告げられるが、席割りを取り仕切る女将より暫し待てと云われて座るキャッシャア横の椅子。
十五分後にはたった一つだけ空いたカウンタア席に案内されていた。
振り返ると、後に続く待機の客が数名所在無く立っているのが見える。
まずは一献と冷酒を一合頼み、やがて出て来るはじっくりと茹でられ塩胡椒で塗されたほろほろの牛舌を摩り下ろされた山葵で戴く。
◇一ノ蔵(宮城・松山)
全てをやっつけ、三十分弱で店を後にし、続く二軒目。
つまらねぇ顔を幾つか眺め、此処も立ち去って先に向かった地階の店へと再び。
流石に二十三時も過ぎると客は減っており、樂樂着座と相成る。
とは云え、代償として大鍋に煮えた具も激減しているのだが。
まずは葛豆冨から戴こう。
花鰹に醤油が掛け回されており、山葵が添えられている。
冷酒を飲まずばなるまい。
◇豊盃(青森・弘前)
◇陸奥八仙(青森・八戸)
京風だしにてよく煮込まれた里芋、雁擬き、玉子、竹輪麩を練り芥子で戴く。
程好く飲んだくれて勘定を済ますと、帰りしな何故か大将の甥が勤めるという六本木の伊太利亜んな店の電話番号だけが記された紙切れを渡され、此の情報を頼りに店の名を調べようとする気概を天啓を待つが如き心持ちにて帰路に着くのである。
(了)
※"filhos" フィリョース(葡) ・・・ 小麦粉と溶き玉子を混ぜ油で揚げた菓子
投稿者 yoshimori : February 15, 2011 11:59 PM