さてさて千代田区である。
空腹である状態を愉しむ年齢に差し掛かって来たと断言しよう。
其れは満たされた六腑の儘で酒精を飲んだくれても旨くない事に起因する。
此の日、二十一時も過ぎた頃に野に放たれた地鶏を手捕まえにして羽根ェ毟って丸裸にして細ッかく切り裂いて串刺しにして熾った炭火でバーニングされた肉片を喰らおうとカウンタアだけの店を訪ねる。
どういう思想の店か不明ではあるが、男性店員の誰もがスキンヘッドである。
突き出しは、公魚(わかさぎ)の南蛮漬け。
苦味と酸味と辛味が腔中に在るとなると、矢張り一献酌まずばなるまい。
◇麒麟山(新潟・津川町)
炭焼かれた串物として、手羽先、捏(つくね)、梅紫蘇、獅子唐をいただく。
つくねに軟骨感が無いのは少少寂しい限りではあるが。
品書きに載らない酒を求め、絵的にネオ何とかにも似た党員を呼ぶ。
「あー、そっすねぇ、蔵元が酒屋を呼び付けて瓶詰めさせたっていう限定のがあるんすけど」
党員の話す言語が日本語にも聞こえないが、独逸語ではなかった事に安堵すると同時に其の品を頼む。
◇豊盃 限定酒(青森・弘前)
續けて一合。
◇酔鯨(高知)
程好い時刻に追い出され、夜半に降り出した雨を高速で避けながら、段々上がる梯子酒は止しとし、大人らしくおとなしく帰路に着くのである。
(了)
投稿者 yoshimori : February 17, 2011 11:59 PM