通い慣れた千代田区界隈に佇む昭和四十七年創業という老舗を訪ねる。
不本意ながら地図の読めない女子の様に彷徨い、恍惚の老域に達したかの如く徘徊。
都内に林立する居酒屋店頭で客を引く法被女子には歩く姿すら見られたくないと思う。
住所通りに辿り着いた約束の地は、果たして幾度も通り過ぎた場所だった。
・・・更地である。
雑居ビルとオフィスビルの間、囲い込んだ木枠の柵も危険を報せる黄黒の綱も真新しく、地鎮祭の如き厳かささえ感じる。
思えば情報源の最終履歴が二年と二ヶ月前という時間差に注目すべきだったと今更感もひとしお。
店頭に晒される埃被りな商品サンプルや色褪せた無骨な赤暖簾は最早記憶の中でしかない。
・・・代打を求め、旅に出ようと意を決する。
道は長く険しいと考えるのは想像に難くない。
妥協を許した時点で勝ちは無いとするのであれば、既に負けている。
偶には負け戦も悪くはない。(妄言)
(了)
投稿者 yoshimori : March 4, 2011 11:59 PM