March 12, 2011

『継ぎ目無きヘリウムの都』 (第壱回)

闇と混沌の象徴であるという。
世間の評判は良くない。
一般的な感覚からすると、肌は青白過ぎるきらいはあるが、元の漆黒から青味がかった美白に仕上げるまでの過程の労力は計り知れない。

「黄」を意味する名を与えた。
特に意味は無いが、北米における地名でもある。
男性名ではあるが、性別は女子長身小顔ながら蟹股で猫背、整った顔立ちながら赤眼で吊り目ではあるが、自慢の娘である。

しかも此の娘、世界の危機を救う級の重要な使命を帯びているのだが、如何せん素人に毛が生えた程度の技量しか持ち合わせておらず、艱難辛苦は如何許り
道中にて身の程知らずの夜盗掻っさき家尻切りを返り討ちにしたり、人んちの畑を荒らしてくすねた材料で薬品を調合して売り捌いたりして日銭を稼ぐ暮らしを余儀無くされている。
昼は野外を漫ろ歩きで野草薬草を毟っては摘み、夜は人目に付かぬ様に作荒らし雨降り風間病み患い古代遺跡雨露を凌ぎ、身体の調子が良い時は「世直し」の名を借りて悪党どもの隠れ棲まう洞窟を襲って皆殺し

宿無し文無しながらも今日も健気に生きております。
不束な娘ではありますが、今後ともご贔屓にと願っておきます。

(續く)

投稿者 yoshimori : March 12, 2011 11:59 PM
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