売られてゆく犢(こうし)の心情は誰にも、そう当の犢にさえ分からないのと同様に、不遇を憂うしか果たせないもどかしさから思考停止に陥る事もしばしば。
暗渠の上に建つ店の暖簾を掻き分けると見慣れた景が其処に。
突き出しの鮪の山掛けに醤油を垂らし、まずは一盞(いっさん)と冷酒から始めずばなるまい。
續けて煮込まれた具材を、大根豆腐つみれを練り芥子で。
追加で新じゃがで作る揚げ物、〆鯖を山葵おろしで。
二軒目は激辛で攻めようとする愚行を制し、再び思考停止を續けるしかないのだ。
(了)
投稿者 yoshimori : March 14, 2011 11:59 PM