千代田区に来ている。
本日はJRのガード下に店を構えるスタンディング焼肉である。
寒空の中、ビニールシートを捲って中に入ると、中央に据えられた卓上にはふたつばかりの七輪の中に火がごうごうと熾っており、他には割箸と岩塩が置かれているだけの空間が其処に。
開店当初からテンションAGEAGEな店長が出迎えてくれる。
「あんなあんな、丁度ええわぁ、今日作ったんやけどな、こないだ沖縄に行った時に仕入れたあぐー豚で作った餃子があってな、めっちゃようでけたからな、ちょ食べてみて食べてみて、むっちゃ旨いから、何も付けんとそのまんまでええねん、足りんかったら何か足してな、箸つこぉて、この箸つこて、いろいろ試してねんけどな、人気あったらメニューに加えようと思て、いやぁ、これほんまやったらうちのスタッフの賄いなんやけど、後で何とかしとくから、ごめんなごめんな」
「あんな、ほんま云うたら一見(いちげん)さんには生肉出しよらんけどな、今お客さんあんまおらんから特別に出しとくわ、誰かに何か云われても『二回目や』云うてな、何やったら今一回お会計して、いっぺん外出てからまた入って来て貰ってもええよ、ってそんなわけあるかいな」
<生刺し>
レバ、ハツ、タン、カイノミ、ザブトン
「うちのレバは潰したてやからね、いっぺんぽん酢で喰うてみてください、普通やったらぽん酢には酸化剤入ってねんて、せやから鮮度の落ちたレバやったら灰色になってまうねんけど、うちのは大丈夫、あ、他の肉は胡麻油で喰うてな」
「皆聞いて聞いて、今な、日テレさんから電話あったんやけどな、来週な、AKBの新番組の収録でうちの店にロケハン来るらしいんやわ、で、二十人までいけますー云うてみたけど、AKB48やから・・・えー、半分も入れんわな、来週あれやったら皆うち寄ってってや、云うてもロケハンやからAKBのメンバーひっとりもおらへんけどな」
「じゃあ、本日もお疲れ様でした、乾ぱぁい!」
帰りは外まで見送られ、店長より名刺をいただく。
彼は自らを「大阪難波の元ホスト」というが、成る程その喋りには説得力がある。
次の河岸を目指して中央線に乗り込むとしよう。
(了)
<覚ヱ書キ>
◆御代櫻(岐阜・美濃加茂)
◆永寶屋(福島・会津)
◇焼き物(ミノ、カイノミ、ザブトン、トントロ、マルチョウ、ハーブ入りウィンナー