<蚊ノ啼ク夜歩キ>
首都として認識されている中心部の街中をのそのそと歩いていると、緑黄色な肌艶の女より声を掛けられる。
聞けば、女の亭主が所属する組織では、「神の名の下に昼に表を歩けない主食が血液の人」を専門に討伐しているという。
同団体の代表者より「この街を守る為に君も参加しないか」と勧誘され、自ら正義の味方と名乗る奴にろくな奴は居ないと思いながらも、まァとりあえず俗世間と絡んどくかと思い直し、疑わしいとされる男の身辺調査を引き受ける。
調査の結果、容疑者とされた男は潔白どころか最愛の相方を奪われた被害者であり、依頼者である団体の代表が黒幕と判明。
東大モトクロスとは正に此の事で、確かに彼は陽も高い内は完全武装の用心棒に守られながら自宅に籠って爆睡を決め込み、夜な夜な起き出しては「ん、まだ其処に居るのか、あいつが疑わしいから調べて来いってば」と高圧的な物言いを繰り返し、稀に外出して不在なのは深夜ばかりである。
代表が真夜中に戦没者への祈りを捧げているという情報を得て、慰霊碑的な祭壇のある洞窟に向かうと、中はもう酷い有様で、吊るされた死体や棺桶の中に転がった骨があるばかりで、今晩はーと扉を開けた時には丁度彼は食事の真っ最中だった(と思われる)。
逆上して襲い掛かる代表を返り討ちにして、無事に帰還。
一時は容疑者とされた男より大仰に感謝され、「自分はあの団体の代表を引き継ぐ」とこれまた危険を掻い潜ったにも関わらず自らをも顧みない殊勝な発言。
えー? だってあいつらみんな血吸い仲間じゃないの、と思いきや団体の事務所を訪ねてみると、「ほんとごめん、あいつがあんな奴とは全然知らなかった、今は新しい代表と共に活動を続けてくから許してくれ」とぼんくらにも程がある返答。
新代表より挨拶があり、「もうあいつら汚らわしいから皆殺しにしちゃおうよ、皆でさ、それであいつらをぶち殺した証明になるんで遺灰を事務所まで持って来てよ、引換券になるから」と手持ちの遺灰は幾つか回収され、多額の報酬を受け取る。
遺灰を手渡す度に、「また殺して来てくれたのかい、君だけが頼りだよ!」と満面の笑顔で返され、惜し気もなく法外な金額の支払いを済ます新代表。
彼と自分の共通項、互いに裏の世界でしか生きられない存在と再認識するのだった。
<無銘居士>
中心部より南西にある都市にて再び不動産物件を購入。
所有物件数、都合三軒目である。
全財産の半分以上を投資してまで手に入れる必要があったか疑問は残るが、石造りにて近代的な建築方式の三階建ての高級住宅。
購入後に仲介者より「何某さんがまだ家に居座ってるみたいだけど気にしないでね、ていうか本人同士で何とかしてね」と云われたが、実際に内見しても何某とやらは不在である(今のところ)。
ていうか、詐欺じゃね?
あと気になるのは、先日町内でキチガイが刃物を持って暴れ出した事件があり、出張った衛兵の法的に処理した死体が未だに隣家の軒先に転がってる事かな。
<朧ナ生体反応>
前述の都市よりやや北方にある祭壇らしき像の前に立つ。
(敢えて何からとは云わないが)託宣に依ると、「ふたり組の海賊に目を盗まれた」という。
経験上多くを尋ねずに、わっかりやした親方ァそいつを取り返して参りやしょう、と盲目的に動くのが常となっており、即日海賊の暮らす自宅を訪ねる。
(ていうか、海賊が陸に住んでてどうするか)
海賊は賢明な兄と愚鈍な弟という構成で、弟の「ねぇねぇあんちゃん、あの場所で大丈夫かなァ」と、兄の「黙れ、その話は後だ」的なうっかり発言から隠し場所が判明。
のそのそと回収に出張り、即日持ち主に返却。
「お前には感謝しよう、海賊どもには天罰を与えよう」
どういう内容の罰かは訊かなかったが、折を見てあの海賊兄弟の安否でも確認してやろうとも思う。
(續く)
投稿者 yoshimori : April 7, 2011 11:59 PM