April 28, 2011

『終ノ棲家』 (第弐拾回)

<ちゃっぐちゃぐにしてあげる>
世の中が段階的に殺伐とし、其処彼処にて物騒な雰囲気を醸し出し始めて戒厳令が布かれる中、危険地域の最前線とも思しき荒野にて呑気にも野営を構える女と話す。
聞けば、女は何らかの特殊技能を持っているという。
「教えて欲しけりゃァ熊の皮を二十枚集めて持っておいで」と云われる。
分相応に自分の立ち位置を考えると、熊とガチでやり合うのは生命に危険があると感じるので、此処は少し躊躇しておく。
荒原より街に戻り、夜盗山賊から剥ぎ取った装備品を売り捌いていると、日頃利用している商店の陳列棚に熊の皮が並んでいると気付く。
何でぇ、カネで解決じゃんか。
現時点にて多くの特殊能力を身に付けており、装備品のメンテナンスは業者を頼らず、身体能力を含めてかなり人間離れしている故に成功報酬付きの無理難題も即時解決の為、収入は多額にあっても支出がほぼゼロに等しい。
煩わしい問題を過剰な財力に物を云わせて解決してゆくのが、果たして正義の味方のやり方なのだろうか甚だ疑問ではあるのだが。

(續く)

投稿者 yoshimori : April 28, 2011 11:59 PM
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