<贋作英雄譚>
眠過ぎる。
という訳でもないが、早早の店仕舞いも考慮しつつも人間狩りの旅に出る。
と表現してしまうと人聞き悪い事此の上も無いのだが、世の為人の為という大義名分を掲げた世直し巡業である。
一軒目、人世の生血を啜る輩どもを太陽の光の名の下に殲滅。
所管の組織に彼等の遺灰を持参すると換金して呉れるという至れり尽くせり具合。
二軒目、不埒な悪行三昧の下郎どもを正義の鉄槌とばかりに皆殺し。
剥ぎ取った遺品を血糊も拭わない儘、懇意にしている商店に持ち込んで売り捌いて上客扱い。
三軒目、醜い浮世の鬼どもは人型でこそあれど知的水準に稍(やや)届かず、最下層の暮らしを強いられているので、屈強頑丈な図体に由来する腕力体力等物理的な手応えの割には貰いが少なく、生態系が狂う程度に根絶やししても、過程に於いては手傷を負うばかりで損得で云う損な感も否めない。
一汗流し、いやァ狩った狩ったと云いながら勝ち得た戦利品を死屍累累とした殺伐たる事件の現場で拡げて品定めをしている。
・・・確かに捕った悪狸には相違無いが、死骸の前で皮算用する守銭奴に成り下がったかと思うと、正義の味方としては子供達には見せたくない姿でもあるのだ。
(續く)
投稿者 yoshimori : May 26, 2011 11:59 PM