<滑落ヲ看取ル>
と云う訳で丸裸の無一文となる。
然も開始時点で縄付きの凶状持ちである。
捕囚生活は一度通った道だけに、着せられた囚人服に抵抗が無いから不思議だ。
足枷こそ付けられてはいないが、手枷も程好い装飾品である。
前例に従って「世界を救え」と亡き帝から託されるも、其の意には従わない心積りである。
先代は正義の味方を大義としながらも雲行く儘に水流るる儘に生き、晩年は資産家として過ごしたが、兎角世知辛い世を儚んで隠遁してしまった。
そして、当代には「琥珀」を意味する名を与えた。
また古くは泉の意を汲む母から生まれて神の妻となり、虹、突風、疾風と名付いた掠める女、暗黒を生み出したという女傑に由来する。
此の娘を正義の味方という名の使いッ走りだけにはさせたくないという父の願いを込め、友人知人を持つなと躾けておいた。
西に困窮する人在れば素通りせよ、東に瀕死の人在れば向こう側に逝ける手伝いをしろと。
結果、会話は武器商人との闇取引に限定され、娯楽は狩猟(人間含む)のみ。
父の教え通りに娘は行商以外にはいっかな街には寄り付かず、荒くれどもが闊歩する荒野を四ツ足同然に徘徊しており、果ては西海の海底にて人喰い魚や人骨と戯れるという毎日である。
・・・ていうか、やってる事自体は先代と変わらんな。
(續く)
投稿者 yoshimori : June 6, 2011 11:59 PM