<通ヒ路ノ迷ヒ子>
四ツ足の名を冠する河川の上流に来ている。
水源は東の山中にあるのだろうが、地図上に表記はない。
沸き出でる支流が集まって河となり西に向かって流れ、内陸にある巨大な湖に注がれているのだ。
川沿いを徘徊する果てに辿り着くは、岩場に囲まれた唯一つの出入口を持つ地下構造の廃墟。
木製の扉の前には古びた日記が雨曝しとなっており、非礼を省みずに中を改めると著者が未だ見ぬ異邦人に宛てた内容である。
知らない人の書いた長文を読み込む程の気概もないので、流し読んでから元の場所へそっと返し置くと斜面なる岩場の為か、何処までも転がってゆくが、無論追う事も拾う事もない。
内部へ侵入し、群がる魂無き住人らを強制的に排除しながら奥へと進みつつ、設置してある書見台を物色すると、前述の日記の主の覚え書きや手紙、果てには名指しでの脅迫文が発見され、うかうかと斜め読みしてみる。
成る程、この薄暗く死臭漂う廃墟で何が起きているのか、点と点が繋がろうとしていた。
ざっくり読み解くと登場人物は二名。
便宜上、日記の著者をEとし、Eの同僚をVと呼称する。
EとVは共に組織の同期でありながら、Eの規律に反する度を逸した行為を許容できないVは思い悩む。
或る日を境に一線を超えたEは組織を追放され、VはEの後を追う様に離脱する。
やがてEは居を構えた廃墟にて禁断の研究に手を染め、見るも無残な変わり果てた姿となってしまう。
見かねたEはせめてもの情けと思い、Eを人の姿として浄化しようと画策するのだが・・・。
結果を見定めんと最深部を目指す。
奥にある玉座の間に、猫背の老人が徘徊している姿が見える。
こんにちはーと近寄ってみるも、老人性のあれか他の理由からか、当方を空気の様に黙殺を決め込んでいる様子。
老人のぶら下げた名札を確認すると、EとVの連名である。
・・・合体?
力負けして融合されたかしらね。
まァいろいろあったけど、彼らは今でも仲良しなんだと勝手に決め付け、しょぼしょぼと歩くだけの老人に背を向けて廃墟を後にするのだった。
(續く)
投稿者 yoshimori : July 5, 2011 11:59 PM