本日ァ寄席は夜の部の後に催されます特別興行でござんす。
『第十二回復興支援寄席~若手三人男~』
@新宿三丁目・新宿末廣亭
表にゃァ紙切りの林家正楽師匠、三遊亭円丈師匠らが、震災向けの義捐金を募る箱を持ってうろうろなさっております。
入場を待って並んでおりますてぇと、皮肉にも開場直前に大きな地震がありまして、後で伺いましたら東京二十三区では震度四もあったそうで。
末廣亭の軒先に下がる提灯がゆらゆらどころか、ぐらんぐらんと揺れておりました。
柳家三之助◆南瓜屋
「先日、自宅のエアコンが壊れまして」
「・・・皆さんの反応を見ますと、ざまァ見ろではなく、同情されているの感じが伝わりますねぇ」
「矢張り寄席は客席と高座の一体感ですよ」
「当然、業者の方を呼びましてエアコンを直していただいたんですが」
「修理が終わりまして、お茶なんぞ出しながら業者の方からお話を伺いますと」
「この方達はエアコンが壊れた時と新規設置に室内と屋外でお仕事なさってるんですね」
「夏の暑い最中、涼風に当たる機会が無いんです」
「勿論、冬も同様で暖房に肖(あやか)れる事も無いんです」
隅田川馬石◆粗忽の使者
「今回の寄席でお呼びが掛かりまして、お引き受けしたんですが」
「最初伺った時は『甲子園寄席』かと思いました」
「確かに自分は野球経験者だし、そういう意味合いで呼ばれたのかと思いましたが」
「よくよく伺いますと、『ふっこうしえんよせ』でしたね」
古今亭菊之丞◆船徳
「あたくし今日、所沢に(午後)八時まで居りまして」
「この会に間に合わないといけないので一度は断ったんですが、調べて見ると何とか間に合うと分かりましてお引き受けしたんですが」
「・・・それで、九時過ぎに地震でございましょう、ねぇ」
「電車が少し遅れましたが、何とかこの高座には間に合いました」
「・・・間に合ったんですが、楽屋入口で円丈師匠に『遅ぇじゃねぇかッ』って怒られまして」
「・・・矢ッ張り引き受けなきゃよかったかなァと思いました」
本編:
「何をぅ、歌いたい? お前は柳亭市馬か」
追い出しが鳴りまして、お開きで御座ィます。
開演前にほど好く御酒を戴いておりました所為か、もう睡魔に襲われまくりでして、三師匠方の高座がどうにも夢心地で大変難儀致しました。
酩酊な儘ァ引き上げまさァね。
(了)
<覚ヱ書キ>
壱:ヤムウンセン、カオマンガイ、パットホイライ、チャーン
#2; Inishowen, Ardbeg