July 19, 2011

◆『忌日』

本日ァ神保町での落語会でござんす。
開演前に時間があるてんで、会場の近くにあります半島系な店でキチゲェ水と辛味ある何品かを程好く戴きましてからの油断した運びに相成ります。

『らくごカフェに火曜会』
@神田神保町二丁目・神田古書センター五階

会場にて墨西哥産の麦酒を戴きましたところで、一番太鼓が鳴り始めます。

春風亭一之輔◆粗忽の釘

「台風が近付いてますね」
「私が前座の頃、新宿末廣亭での出番がありましてね、当日物凄い台風だったんですよ」
「お客さん来ないだろうなァと思いながら、念の為うちの師匠(一朝)に電話してみたところ」
「『やらないとも連絡が無いから、行くだけ行ってみたら?』と云われまして」
「末廣亭に行きましたら、席亭もスタッフも皆来てるんですね」
「で、矢張り時間になってもお客さん一人も来ないんですよ」
「暫くして席亭が前座に『これで何か旨いもんでも買って来い』って一万円くれたんです」
「で、近くの伊勢丹の地下食品街に向かいまして」
「折角だから食べた事ない物を買おうと、・・・ムール貝とか買いましたね」
「それから寄席に戻りまして、皆さんと買って来た食材を抓みながら・・・流石にビールは飲ませて貰えませんでジュースでしたが」
「そしたら席亭が『お前、落研の頃は大ネタばっかり演ってたんだって?』と絡んで来たんですよ」
「いや、そんな演ってないっすよ、なんて否定してたんですが」
「『こっちは知ってんだぞ、落研の横の繋がりで全部情報入ってくるんだからな、卒業の会で<ねずみ>演ったらしいじゃねぇか』って云われましてね、『それを演れ』と仰るわけですよ」
「で、高座に上がって演り始めたんですが、五分で下ろされまして」
「『まさか、ほんとに演るとは思わなかった』って云われました」
「あれ以来、『ねずみ』は演ってません」

「まァ酒が入りますと人は変わりますね、よく喧嘩もしましたし」
「いくら縦社会で前座同士が先輩後輩の関係でも、生ビール二十五杯も飲みゃァ、ねぇ」
「『お前ンとこァいいよなァ、一朝師匠なんてさ楽でよォ』」
「いや、別にそんな事ないですよ」
「『いや、お前ェんとこは絶対ぇ楽だ、全然楽なんだよ、楽楽』」
「・・・楽楽ってねぇ・・・お前が好き好んで(柳家)権太楼んとこ行ったんだろうがッ!」
「・・・誰とは云いません」

「・・・なでしこジャパン、この辺がむず痒くなりますね、云ってて」
「私は当日、後半終了の二分前から見てました」
「フジテレビの青島アナ、何か色々云ってましたね、前もって考えてる様な台詞ばかりですよ」
「でも、親近感ありますよね、女子サッカーの方は」
「日高屋とかでバイトしてそうじゃないですか」
「フィギュアの方は何だかお高く留まってらっしゃいますし、女子バレーは長身で美人の方が多いですしね」
「女子サッカー、アメリカ代表のワンバック選手は背が高くて短髪で宝塚みたいでねぇ、(三遊亭)小円歌みたいな」
「私は背の高い短髪の女性が好きなんですよ」
「ワンバック選手に『オマエ、ソコニスワレ』なんて命令されてね」
「『オマエノラクゴハツマラナーイ』なんて云われてみたいですね、ぞくぞくしますよ」
「その点、女子サッカーの方は親近感ありますからね」
「あの娘達、車座んなって飲んでそうじゃないですか」
「『今日、山で捕れた猪だー』って持って来たりして」

「えー、台風が近付いてますから皆さんともこれが最後かも分かりませんが、一席ご機嫌を伺っておきます」

本編:
天井に巣を張る蜘蛛を見た大工の職人、「(三遊亭)天どんみてぇな面ァしやがって、この野郎、この野郎、この野郎」と八寸もある瓦ッ釘で叩き殺します。
一之輔あにさんにとっては大師匠に当たる先代の柳朝師匠と同じ型でして、行水桶のえぴそーどがありました。

サゲ:
「八寸の瓦ッ釘じゃァ箒ィ掛けるにゃ長過ぎた」

蜃気楼龍玉◆星野屋

客席にお子様がいらっしゃるのは先刻より百も承知ですが、大店の旦那とその妾の噺で御座ィますよ。

サゲ:
「(実は本物の小判と)そう思って五枚くすねといた」

お仲入りで御座ィます。

春風亭一之輔◆不動坊

「えー、龍玉師匠は先程お客様よりビールを戴きまして、ものの十分で既に二本目に手を付けています」
「まァ通常は二人で四席演るんですが、二席ずつ演るとあまり良くないんですね」
「先日も龍玉師匠、三遊亭天どんなる珍妙な名の方と私で『牡丹燈籠』をリレーで演りまして、まァ痛い目を見ました」
「ですから、私でお開きという事で・・・」
「・・・龍玉師匠、まさか二本目を飲み始めるとは思いませんでしたけどね」

本編:
落語中興の祖と呼ばれる天どん師匠の弟子で布哇(ハワイ)出身の三世、三遊亭ロコモコが幽太役で登場します。

追い出しが鳴りまして、お開きで御座ィます。
夕暮れ時にノセましたのが未だ尾を引いておりますので、キチゲェ水だけを求めまして水道橋より総武線に乗りますな。
新宿方面を目指しまして途中下車ァしますが、それは又別ので御座ィます。

(了)

投稿者 yoshimori : July 19, 2011 11:59 PM
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