本日ァ湯島での根多出し落語会でござんす。
曇天模様ながら降りそで降らずに湿度だけが上昇してゆく気候でして、僅かばかりの移動でさえ難儀しますな。
そんな言い訳だけじゃァござんせんが、湯島天神への参詣は毎度毎回女坂を選って上りまさァね。
『第三回 らくご・古金亭 ~時しらず、夏の冬噺~』
@湯島三丁目・湯島天神参集殿一階ホール
当会、「五代目古今亭志ん生・十代目金原亭馬生師匠の遺された演目だけを演じること」を目的とされてまして、毎回一門以外よりひとりの助演(げすと)をお招きしての会だそうで。
十七時五十分より前座さんが高座に上がりまして一席を伺います。
前座の噺は番組に入らない所以の開演時間前のお勤めで御座ィます。
金原亭駒松◆狸の札
「金原亭馬生の弟子で駒松と申します」
金原亭馬吉◆不精床
この噺、どうにも不衛生で尚且つ人体破壊描写も烈しいてんで、さして好まないんですがね、馬吉あにさんが演りますてぇと、元より声が高い所為か、現世から少ぅし高い位置まで飛躍しまして痛みが伴わない絵空な他人事として傷を負う髪結い床における被害者を俯瞰出来ましたぃ。
桃月庵白酒◆粗忽長屋
「夏バテでしてね、こう見えても8キロ痩せました」
「・・・誰も気付いちゃァくれませんが」
「まァ貴乃花ぐらいの状態だと周りに気付いて貰えるんでしょうけど」
「・・・あの痩せ方は異常ですよね、どう考えても現役時代に何かやってたんじゃないかと」
「夏と云えば矢張り怪談噺なんでしょうが、近頃ではあまり演りませんで」
「今でも高座に掛けますのは、(林家)正雀師匠ぐらいですかね」
「あたしも(五街道)雲助一門として、前座の頃にお手伝いした事もあるんですよ」
「弟弟子の(隅田川)馬石と鳴り物を合わせたりしまして、こいつは真面目なんですが本番に弱いという」
「もうひとり下に(蜃気楼)龍玉てぇのが居るんですが、こいつは役に立たないので『お前、見学な』って云って何もやらせませんでした」
金原亭馬生◆唐茄子屋
馬生師匠、緋毛氈の高座に敷かれた座蒲団の端をを捲りながら訥訥と話し始めます。
「高座用で少し厚めの座蒲団は使い古してても不思議と足が痺れ難いんです」
「・・・これ、普通の座蒲団ですよね」
「前回(の会)は震災の直後でしたか、歩き過ぎたのか膝を痛めてまして」
「(春風亭)小朝さんのお弟子さん(ぽっぽ)、女の子の前座さんの肩に掴まりながら高座を下りました」
「・・・今日は男の前座なんで自力で下りますがね」
馬生師匠、矢張り膝がよろしくないのか高座を下りる動作が必然的にゆっくりになります。
見兼ねた前座が袖より介護に駆け付けようとしてまして、「お前はいいよ!」なんてぇ云われてました。
本編:
舞台となります、本所達磨横丁より吾妻橋を渡りました田原町の誓願寺店(せいがんじだな)を「今の浅草ビューホテル辺り」と説明します。
お仲入りで御座ィます。
仲入り後は「時しらず、夏の冬噺」と銘打ちましての趣向でござんす。
柳家小満ん◆三助の遊び
前座さんの手によって座蒲団は厚手の品に入れ替わりまして、小満ん師匠が高座に上がります。
「(座蒲団の端を捲りながら)こっちの方がいいですね」
「座蒲団はいいんですが、高座は不安定なままですね」
「(高座を指して)これは替えられないの?」
「三助という商売の方はもう殆ど居りませんね」
「銭湯自体が年々減るばかりですから」
「落語協会に柳家さん助師匠という方が居りまして」
「高座では客席に向かって『お背中流しましょうか』なんてぇ根多を披露されてましたが」
「・・・あの方も銭湯と共に居なくなりましたね」
五街道雲助◆替り目
寄席では「元帳を見られた」までしか聞かれません噺の通し公演で御座ィます。
下座さんの爪弾く生三味線に乗せましての新内流し、都都逸、小咄餡子入り、大津絵(冬の夜)を唄い、上半身のみで活惚(かっぽれ)まで踊るという盛り沢山な内容でござんした。
根多おろしなのか如何かは存じませんが、大津絵導入部ではしくじりが御座ィましてそれも愛嬌ととられて受けておりました。
追い出しが鳴りましてお開きで御座ィます。
湯島と云えば外せない近くにありますなんてぇ半島系料理の店に伺いまして、蒸された豚肉をおきあみの塩辛で浸し白菜と大根の漬物で包んで順繰りにノセまさァね。
仲入り前の馬生師匠の噺にもありました「久離切って勘当」なんてんで、胡瓜刻んだ焼酎も戴きまして湯島の切通しの向こう、夜は更けてゆくので御座ィます。
(了)
投稿者 yoshimori : July 27, 2011 11:59 PM