August 01, 2011

『新宿区の女』

ファミレス、午前四時、背中合わせの隣席、男女の顔は見えない。

「今度さ旅行に行くんだ」
「えー、いいなー、ミカ(仮名)もいきたーい」

「・・・家族旅行なんだよ」
ずるーい、パパは家族の人と旅行にいけてもミカとはいけないんだー」

「・・・まァ、それでさ、もう何かまずいんだよね」
「何がー?」

「何ていうかさ、もうカミさんに危ない感じでさ」
「えー、どういうことー?」

「お、終わりにしたい感じなんだ、みたいな
「ねぇパパさー、それでいいのー? そんなんで満足なのー?」

「ね、今まで愉しかったし、ミカちゃん若いんだから
「パパはね、ミカと別れてしまったらー、もうこんな若くてかわいい子と二度といちゃいちゃできないよー?

「そ、そうなんだけどさ、弱ったなァ
「今日も泊まってくでしょー?

「明日、会議で朝早いんだよ」
「会議は何時?」

8時かな」
「じゃァパパにプレゼントあげるー」

「何かな?」
腕時計です。腕出してー

左手?」
「そうそう、何時がいい?

「何時って・・・」
じゃァ会議の時間にしたげるー、(取り出した油性マジックで)はい、8時ー

「ねぇ、ねぇこれ、消えないよ!
「ふふふふ、パパその時計超似合うー

「弱ったなァ、これ、どうすんの、ほんとに」
「で、パパはミカに何をくれるの?」

怖ぇ。

(了)

投稿者 yoshimori : August 1, 2011 11:59 PM
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