ファミレス、午前四時、背中合わせの隣席、男女の顔は見えない。
「今度さ旅行に行くんだ」
「えー、いいなー、ミカ(仮名)もいきたーい」
「・・・家族旅行なんだよ」
「ずるーい、パパは家族の人と旅行にいけてもミカとはいけないんだー」
「・・・まァ、それでさ、もう何かまずいんだよね」
「何がー?」
「何ていうかさ、もうカミさんに危ない感じでさ」
「えー、どういうことー?」
「お、終わりにしたい感じなんだ、みたいな」
「ねぇパパさー、それでいいのー? そんなんで満足なのー?」
「ね、今まで愉しかったし、ミカちゃん若いんだから」
「パパはね、ミカと別れてしまったらー、もうこんな若くてかわいい子と二度といちゃいちゃできないよー?」
「そ、そうなんだけどさ、弱ったなァ」
「今日も泊まってくでしょー?」
「明日、会議で朝早いんだよ」
「会議は何時?」
「8時かな」
「じゃァパパにプレゼントあげるー」
「何かな?」
「腕時計です。腕出してー」
「左手?」
「そうそう、何時がいい?」
「何時って・・・」
「じゃァ会議の時間にしたげるー、(取り出した油性マジックで)はい、8時ー」
「ねぇ、ねぇこれ、消えないよ!」
「ふふふふ、パパその時計超似合うー」
「弱ったなァ、これ、どうすんの、ほんとに」
「で、パパはミカに何をくれるの?」
怖ぇ。
(了)
投稿者 yoshimori : August 1, 2011 11:59 PM