August 18, 2011

『泉涌寺の女』

追い出しの音、静かにアパレル、ルーパスさやえんどう、最後の蒸留酒

「実は食べられないものが多くてですね」
そうかい。

「まず、が駄目なんですよ」
当たるから?

「いえ、魚臭(さかなしゅう)が。生も焼きも無理ですね」
甲殻類も貝もかい。

「まァ厳しいですね。もかなり難しいです」
何で出来てるのかね、君は。

「基本、サラダとヨーグルトですね」
女子か。炭水化物も喰わんのか。

「んー、まァ太りたくないですし」
えーと、身長は175ぐらいあるね。キロでいうとどれぐらいかな。

「今は63です」
全然普通じゃん。ていうか、痩せてる方だし。

「いや、でも50キロ台に憧れます。こう見えても昔は120キロあったんですよ」
・・・えー?

「十年前とはもう別人ですよ」
・・・そう、だろうねー。同級生と街で遇ってもスルーだ。

「ええ、ほんとにそんな事もありました。前は『横から見ると鼻が無い』って云われてました」
何故かな。

頬肉が付きまくって前に出過ぎちゃって、鼻が陥没してる状態なんですよ」
・・・あー、ねぇ。何でそうなっちゃたのかな。

「120キロの時ですか? 何でですかね、食べる事にしか興味が無かったんでしょうね」
一日中、食べ続けてたのかな。

「そうですね、おやつにカツ丼とラーメンを食べてました」
三食とは別で?

「三食どころじゃないですね。何食かな? 数えた事ありませんけど」
一回のも半端じゃないんだ。

「ええ、よくお蕎麦屋さんでセットメニューとかあるじゃないですか」
ざる蕎麦にミニ天丼みたいな?

「そうです、それをミニじゃなくて大盛してもらった上に、別のオーダーを追加するんです」
卓上が賑やかだな。

「並べると愉しいですよね。見た目が嬉しいじゃないですか」
四人席をひとり使いだ。

「まァ当時はカラダもあれですから、仕方ないです」
蕎麦屋での食事がそれだったら、間食も派手だろうね。

「そうですね、ケンタッキーはバレル喰いでしたし、ケーキはホール喰いです、ひとり分として」
・・・聞いてるだけで目方が増えそうだ

「・・・甘いものだけは今でもやめられなくて大食ですね」
ホール喰いは一気にやっつけるの?

「そうです、だからクリスマスシーズンは二日で10キロは確実に太りますね」
・・・えー? ホールひとつじゃァそんなんにならないよね。

「そんなんじゃ足りませんよ、一日最低3ホールです」
・・・何かもうおなかいっぱいなんですけど。(涙)

「すいません、こんな話ばっかりで」
まァ面白いからいいんだけど。基本的にはサラダとヨーグルトとスイーツで出来ている、と。

「そうです、あと一日3リットルは飲む珈琲と」
・・・君ね、血液が赤くなる要素が何処にも無いよ

「これは医者にも友達からも止められてますけど、これもやめられません」
せめて量を減らすとか、にするとか。

「んー、味がしない液体が受け付けないんですよ」
は味するからいいのか。

「・・・でも、食べものの話してたら何か食べたくなってきました
普段は抑えてるんだねぇ。

激痩せした後はメンテが大変なんですよ。誘惑に流されるとすぐ戻っちゃいますし」
なるほど。

「そうだ、今度皆さんで持ち寄って会を開きましょうよ
何を?

「10人呼んで2,000円ずつ集めて、ケンタッキーのパーティーバレル6つとマックのポテトLL10個と日高屋の餃子5人前とピザーラとかピザハットとか何枚かとタカノのケーキをホールで二万円分買うんです。うわ、超愉しそう」

・・・割り勘負けするのは目に見えている。
ていうかリバウンドまっしぐらだし。

(量)

投稿者 yoshimori : August 18, 2011 11:59 PM
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