追い出しの音、静かにアパレル、ルーパスさやえんどう、最後の蒸留酒。
「実は食べられないものが多くてですね」
そうかい。
「まず、魚が駄目なんですよ」
当たるから?
「いえ、魚臭(さかなしゅう)が。生も焼きも無理ですね」
甲殻類も貝もかい。
「まァ厳しいですね。肉もかなり難しいです」
何で出来てるのかね、君は。
「基本、サラダとヨーグルトですね」
女子か。炭水化物も喰わんのか。
「んー、まァ太りたくないですし」
えーと、身長は175ぐらいあるね。キロでいうとどれぐらいかな。
「今は63です」
全然普通じゃん。ていうか、痩せてる方だし。
「いや、でも50キロ台に憧れます。こう見えても昔は120キロあったんですよ」
・・・えー?
「十年前とはもう別人ですよ」
・・・そう、だろうねー。同級生と街で遇ってもスルーだ。
「ええ、ほんとにそんな事もありました。前は『横から見ると鼻が無い』って云われてました」
何故かな。
「頬肉が付きまくって前に出過ぎちゃって、鼻が陥没してる状態なんですよ」
・・・あー、ねぇ。何でそうなっちゃたのかな。
「120キロの時ですか? 何でですかね、食べる事にしか興味が無かったんでしょうね」
一日中、食べ続けてたのかな。
「そうですね、おやつにカツ丼とラーメンを食べてました」
三食とは別で?
「三食どころじゃないですね。何食かな? 数えた事ありませんけど」
一回の量も半端じゃないんだ。
「ええ、よくお蕎麦屋さんでセットメニューとかあるじゃないですか」
ざる蕎麦にミニ天丼みたいな?
「そうです、それをミニじゃなくて大盛してもらった上に、別のオーダーを追加するんです」
卓上が賑やかだな。
「並べると愉しいですよね。見た目が嬉しいじゃないですか」
四人席をひとり使いだ。
「まァ当時はカラダもあれですから、仕方ないです」
蕎麦屋での食事がそれだったら、間食も派手だろうね。
「そうですね、ケンタッキーはバレル喰いでしたし、ケーキはホール喰いです、ひとり分として」
・・・聞いてるだけで目方が増えそうだ。
「・・・甘いものだけは今でもやめられなくて大食ですね」
ホール喰いは一気にやっつけるの?
「そうです、だからクリスマスシーズンは二日で10キロは確実に太りますね」
・・・えー? ホールひとつじゃァそんなんにならないよね。
「そんなんじゃ足りませんよ、一日最低3ホールです」
・・・何かもうおなかいっぱいなんですけど。(涙)
「すいません、こんな話ばっかりで」
まァ面白いからいいんだけど。基本的にはサラダとヨーグルトとスイーツで出来ている、と。
「そうです、あと一日3リットルは飲む珈琲と」
・・・君ね、血液が赤くなる要素が何処にも無いよ。
「これは医者にも友達からも止められてますけど、これもやめられません」
せめて量を減らすとか、水にするとか。
「んー、味がしない液体が受け付けないんですよ」
酒は味するからいいのか。
「・・・でも、食べものの話してたら何か食べたくなってきました」
普段は抑えてるんだねぇ。
「激痩せした後はメンテが大変なんですよ。誘惑に流されるとすぐ戻っちゃいますし」
なるほど。
「そうだ、今度皆さんで持ち寄って会を開きましょうよ」
何を?
「10人呼んで2,000円ずつ集めて、ケンタッキーのパーティーバレル6つとマックのポテトLL10個と日高屋の餃子5人前とピザーラとかピザハットとか何枚かとタカノのケーキをホールで二万円分買うんです。うわ、超愉しそう」
・・・割り勘負けするのは目に見えている。
ていうかリバウンドまっしぐらだし。
(量)
投稿者 yoshimori : August 18, 2011 11:59 PM