August 28, 2011

『松ヶ崎御所海道町の女』(第3回・最終回)

緩く生きている積もりだ。
八十歳老婆(他人)とのさし飲みすら辞さない構えである。
(そういう知り合いは皆無であるが)

目を覚ますと九時を少し過ぎている。
家人の都合により午前中は慌しく立ち回る事となる。
母親は午後より近所で執り行われる葬儀に列席するから構ってやれないという。
自分には参列の責務はないのだが、話の流れからか数珠を一連手渡される。
奇跡的に葬儀に出席した経験もなく、法要における自派での様式には全くの無学である。
後学の為にと思い、幾つか伺っておく。
とは云え、弔いの為の心構えが事前に出来過ぎていると、何か待っている様で複雑な心持ちであるのは否めない。

実家からの旅立ちの瞬間、うっかりと存命中の祖母(齢九十超)に向けて片手念珠にて合唱礼拝してしまうのも茶目ッ気満載な孫的愛嬌として受け取って戴きたい。

(了)

投稿者 yoshimori : August 28, 2011 11:59 PM
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